
裏側矯正とは
歯にブラケットという金具とワイヤーを使って歯並びを整える治療の一種で、器具を歯の裏側に装着する方法です。
オーソドックスな施術の利点を保ちながら、見た目を気にせず治療を進められます。

このような方に向いています
歯並びに隙間が多い方
上下の奥歯がきちんと噛み合わせられない方
噛み合わせが深い歯並びの方で、軽症から中等症程度の方
矯正装置が目立ちたくない方
舌癖のある方

このような方には向いていません
ていねいな歯磨き習慣のない方
虫歯や歯周病を治していない方
”話す”ことが職業の方
巨舌症の方
長期にわたり定期的に歯科医院に通うのが難しい方
金属アレルギーのある方

治療の特徴
裏側矯正の特徴は次のとおりです。
目立ちにくい
マルチブラケット矯正なので応用範囲が広い
頬や唇に傷を作らない
舌に違和感がある
裏側矯正の種類と特徴
01.フルリンガル矯正
上下顎ともに裏側に装置を装着する完全な見えない矯正です。
最も審美性が高く、どの角度から見ても装置が全く見えません。
02.ハーフリンガル矯正
上顎のみ裏側、下顎は表側に装置を装着する方法です。
費用を抑えながらも高い審美性を実現できます。
03.カスタマイズドリンガル
患者さま一人ひとりの歯の形に合わせたオーダーメイドブラケットです。
装置の厚みが薄く、より快適な治療が可能です。
04.セルフライゲーションリンガル
ワイヤーを固定するゴムが不要な裏側矯正システムです。
摩擦が少なく、効率的で痛みの少ない治療を実現します。
裏側矯正の技術的特徴
- 1
間接接着法
-
模型上でブラケットの位置を精密に決定し、一度に装着する高度な技術です。 正確なブラケット位置により、効率的な歯の移動を実現します。
- 2
3Dデジタル技術
-
CTやデジタル模型により、より精密な治療計画を立案します。
患者さま専用の治療プランで最適な結果を目指します。
- 3
マッシュルームアーチワイヤー
-
裏側矯正専用に開発された特殊な形状のワイヤーです。
舌への接触を最小限に抑え、快適性を向上させます。
- 4
舌側ブラケットシステム
-
薄型で舌触りの良い専用ブラケットを使用します。 違和感を最小限に抑えながら確実な歯の移動を実現します。
適応症例
叢生(でこぼこ・八重歯)
軽度から重度まであらゆる叢生に対応可能です。
表側矯正と同等の治療効果で美しい歯並びを実現します。
上顎前突(出っ歯)
上顎前歯の後退に特に効果的です。
裏側からの力により、効率的な前歯の移動が可能です。
下顎前突(受け口)
軽度から中等度の下顎前突の改善に適応があります。
見た目を気にせずに長期間の治療が可能です。
開咬
前歯で咬めない開咬の根本的改善に効果的です。
舌の位置改善効果も期待できます。
空隙歯列(すきっ歯)
歯と歯の間の隙間を確実に閉鎖します。
審美的に重要な前歯部の改善に特に適しています。
過蓋咬合
深い咬み合わせの改善に優れた効果を発揮します。
複雑な歯の移動も裏側から確実に行えます。
使用機器
裏側矯正では次のような器材を使います。
ブラケット
裏側矯正のブラケットは、ひとりひとりの歯に合わせたオーダーメイド製品です。 歯の形にピッタリとフィットします。アーチワイヤー
アーチワイヤーは、歯を動かす働きのある形状記憶合金で作られた弾性ワイヤーです。 断面が角形、丸型、細いタイプ、太いタイプなどさまざまなタイプがあります。結紮線・オーリング
ブラケットにアーチワイヤーをはめ込んだだけではとれてしまいかねないので、アーチワイヤーが外れないように止める必要があります。 そのときに使うのが、結紮線という細いワイヤー、オーリングというゴムの輪です。(※セルフライゲーションシステムなど最新型では必要のないものもあり)
期待できる効果
裏側矯正には、以下のような効果が期待できます。
歯並びがきれいになる
裏側矯正を受けると、歯列不正が解消され、歯並びがきれいになります。
虫歯や歯周病になりにくい
歯の表と裏で比べると、裏側は唾液の出口があり唾液の流れがよいです。
唾液には歯の汚れが洗い流す洗浄作用、虫歯や歯周病の原因菌を減らす抗菌作用、虫歯を治す再石灰化作用、酸を中和する緩衝作用など虫歯や歯周病を防ぐさまざまな働きがあります。
歯の裏側は、唾液のさまざまな働きが作用しやすくなっています。
このため、意外かもしれませんが、裏側矯正の方が虫歯や歯周病になりにくいです。
矯正装置が目立たない
裏側矯正の矯正装置は、歯の裏側についているので、見えにくいです。
もちろん全く見えないわけではありませんが、通常の表側につける矯正治療と比べると目立ちにくく、口元の見た目を重視する方には大きな利点です。
舌癖が治りやすい
舌癖は、舌先が下がったり、舌を前に出したりする癖で、歯並びを悪くする原因の一つです。
裏側矯正では、歯の裏側に矯正装置がつくので、舌癖があると矯正装置に舌が当たるので、自然に舌が当たらないように正常な位置に戻す癖がつきます。
このため、裏側矯正では舌癖が自然と解消されやすいです。
注意事項
裏側矯正には次のような注意事項があります。
治療費が高い
通常の歯の表側に矯正装置をつけるマルチブラケット矯正と比べると治療費が高いです。慣れるまで話しづらい
言葉を発するには、舌の動きがとても大切になってきますが、裏側矯正は歯の内側に矯正装置がつくので舌があたりやすく、慣れるまでは話しづらいです。歯磨きはよりていねいに
装置がなくても、歯の裏側は磨きづらいものです。特に上顎の裏側です。歯の裏側に器具を装着する治療では、清掃が一層難しくなりますから、治療開始前よりもさらにていねいに磨くようにしなければなりません。治療を受けられない方
次に挙げることに当てはまる方は裏側矯正を受けられません。
01.巨舌症の方
巨舌症は、舌が生まれつき大きい病気です。
巨舌症の方が裏側矯正を受けると、舌が傷つく可能性が高いので、裏側矯正は受けられません。
02.過度な過蓋咬合の方
過蓋咬合とは、噛み合わせが深い歯並びのことで、上顎の前歯で下顎の前歯が隠れてしまう前歯部の噛み合わせを指すことが多いです。
噛み合わせの深さが深すぎると、下顎の前歯が上顎の前歯の裏側の歯肉に当たるような方もいます。
そのような方は、上顎の裏側につけた矯正装置に下顎の前歯が当たってしまうことがあり、裏側矯正は難しいです。また、咬む力が強いため装置が外れやすい傾向にあります。
治療について
裏側装着方式は次のような特徴を持つ治療法です。
- 1
装置を歯の裏側につける
最も特徴的なのは、器具を装着する位置です。従来は歯の表側に取り付けるスタイルで発展してきた治療器具を、歯の裏側につけるという画期的な方法です。これは日本の歯科医、藤田きんやさんが開発したものです。
- 2
目立ちにくい治療法のひとつ
歯の内側は、光が当たりにくく暗いので、内側につけた装置は見えづらいです。目立ちにくいというのも、この治療法の特徴のひとつです。
- 3
歯に優しい
歯の外側を覆っているエナメル質の厚みは均一ではなく、内側の方が厚い傾向があります。このため、歯の内側の方が取り付けた装置を外すときにエナメル質が傷つきにくいので、裏側からの治療の方が、歯に優しいといえます。
- 4
口内炎ができにくい
裏側の装置は意外と舌に当たりにくく、表側につける器具の方がお口の中に傷を作りやすい傾向があります。裏側からの治療は、お口にとっても優しい方法なのです。
- 5
表側につける治療より費用は高額
裏側(舌側)からの治療は、表側の装置に比べて費用が高額です。これは、器具の製作や取り付けに高度な技術が必要であるためです。しかし、装置が目立たないため、審美性を重視する方にとって大きなメリットがあります。
リスク・副作用
裏側装着方式には次のようなリスクや副作用があります。
滑舌が悪くなる
装置が歯の裏側につきますので、器具が舌に当たりやすいです。
舌が装置に慣れるまで滑舌が悪くなる可能性がありますが、しばらくすると慣れてくるので大丈夫です。
歯磨きがしにくい
裏側からの治療は目立ちにくいわけですが、これは食べ物が引っかかった状態になっても分かりにくいことも意味しています。
唾液が汚れを洗い流しやすいとはいえ、治療開始前と比べると歯ブラシは当てにくいです。
それでも、慣れてくれば、きれいに歯を磨くことができるようになります。
違和感の大きさ
歯の表側に装置をつける場合と比べると、歯の裏側につける方式の方が器具に慣れるまでの違和感は大きいようです。
こちらも慣れれば大丈夫なので、さほど問題とはなりません。
治療の流れ
裏側矯正の治療の流れを紹介します。
-
- 1問診
- ご自身の歯並びのどのような点が気になっているのか、矯正治療の方法の希望などをお聞きします。
また、現在かかっている、そして過去にかかったことのある病気の有無、治療歴、アレルギー歴などもお尋ねします。
-
- 2検査
- 矯正治療に着手する前に、歯やお顔の写真撮影、歯や顎のレントゲン写真撮影、歯並びの状態を記録する歯型取りと歯の模型作り、虫歯や歯周病の検査などを行います。
-
- 3診断と治療方針の決定
- 検査結果をもとに、歯並びの状態を診断します。
診断結果から矯正治療の治療計画を立てて説明します。
治療計画に同意をいただければ、治療開始です。
-
- 4装置の作製
- ご自身の歯に合わせたセットアップモデル(シミュレーションモデル)を作り、ブラケットを作るオーダーメイドの装置です。
-
- 5装置の装着
- ブラケットが完成すれば、歯にフィットするか確認し、問題なければ歯に装着します。
そして、ブラケットにある溝に嵌め込むようにアーチワイヤーを組み込み、外れないように結紮線やオーリングを使って固定します。
※最新のものはセルフライゲーションシステムになっているため、結紮は必要ありません。
-
- 6装置の調整
- アーチワイヤーを一定の間隔で取り換え、歯を移動させていきます。
-
- 7装置の取り外し
- 治療計画通り、歯が移動し歯並びが整えられたら、矯正装置を取り外します。
-
- 8保定
- 整えられた歯並びが元の状態に戻らないようにするため、保定という処置に移ります。
保定は、保定装置という装置で行います。
保定装置は、歯に接着する固定式保定装置と取り外しできる可撤式保定装置に分けられます。
保定は歯並びが安定する時期まで続きます。
治療後の注意点
裏側矯正を終えた後の注意点について解説します。
保定
裏側矯正に限らず、歯並びを整えた後、歯の位置が元に戻ろうとします。これを後戻りといいます。後戻りを防ぐ処置を保定といいます。
保定に使う矯正装置を保定装置といい、取り外しできる可撤式と取り外しできない固定式に分けられます。
いずれの矯正装置も、歯科医師の指示通り、一定の期間使い続けることが大切です。
定期的な経過観察
矯正治療が終わった後、保定装置に異常がないか、保定がしっかりできているかなどを確認するために、定期的な歯科受診が求められます。
歯科医師に指示された時期にできるだけ歯科医院を受診するようにしましょう。
当院の舌側矯正の症例
症例1.出っ歯(上顎前突)
- 治療前
- 治療後
- 患者さま情報
24歳 女性
- 主訴
前歯の凸凹が気になる。
- 症状
上下顎歯列の副径の狭窄と叢生を伴う上顎前突。
- 治療期間
1年10ヶ月(動的治療期間)
- 治療費
137.5万円(税込み)
- 治療詳細
上下マルチブラケット装置(上顎はリンガルアプライアンス・舌側矯正・舌側矯正)、TAD(アンカースクリュー)2本使用、QH(クォードヘリックス).BH(バイヘリックス)使用。抜歯症例。
- 治療回数
22回
- 抜歯部位
上顎の左右の第一小臼歯計2本
症例2.デコボコ(叢生)
- 治療前
- 治療後
- 患者さま情報
22歳 女性
- 主訴
前歯の凸凹が気になる。
- 症状
下顎骨の左側扁位、交叉咬合を伴う叢生。う蝕による欠損している歯がある。不良補綴物がある。
- 治療期間
2年0ヶ月(動的治療期間)
- 治療費
126.5万円(税込み)
- 治療詳細
上下マルチブラケット装置(上顎はリンガルアプライアンス・舌側矯正・舌側矯正)、TAD(アンカースクリュー)2本使用。抜歯症例。
- 治療回数
24回
- 抜歯部位
左上第一小臼歯と右下第一小臼歯 計2本
症例3.デコボコ(叢生)
- 治療前
- 治療後
- 患者さま情報
21歳 男性
- 主訴
上下の前歯の凸凹と出っ歯が気になる。
- 症状
叢生、上下顎前突、下顎骨の骨格的な左側偏位。上顎の歯列の狭窄。
- 動的治療期間
2年0ヶ月
- 治療費
154万円(税込み)
- 治療詳細
上下マルチブラケット装置(リンガルアプライアンス・舌側矯正・舌側矯正)、TAD(アンカースクリュー)2本使用、QH(クォードヘリックス))使用。抜歯症例。
- 治療回数
24回
- 抜歯部位
上顎の左右第一小臼歯と下顎の左右第二小臼歯計4本
治療におけるリスク・副作用
- ※歯を移動させる時、違和感や痛みが数日~1週間ほど出ます。感じ方には個人差があります。
- ※歯が移動する速さには個人差があります。早く移動する人もいればゆっくりな人もいます。
- ※矯正装置が装着されるといつもより歯磨きが難しくなります。
- ※毎日、丁寧に矯正装置の清掃をする必要があります。
- ※清掃不十分な場合、虫歯や歯周疾患に罹患することがあります。多数の虫歯や歯周病の進行が認められた場合、治療をして中断・中止することがあります。
- ※歯が移動するとき(個人差がありますが)不可避的に歯の根が短くなることがあります(歯根吸収)。
- ※治療中あるいは治療後に顎の関節に何らかの症状があらわれることがあります。
- ※著しい叢生部分や歯肉炎や歯周病に罹患した部分、歯牙の欠損がある部分は歯肉退縮することがあります。
- ※動的治療が終了した後は、保定装置を使用する必要があります。指示通り使用できない場合は後戻りや予想のできない歯牙移動が起こることがあります。
裏側矯正の相談事例集
裏側矯正をつけたら奥歯が噛み合わなくなりました。食事ができないのですが、このままなのでしょうか?
装置装着直後は一時的に奥歯が噛み合わない状態になることがあります。これは前歯の装置と歯が当たらないようにするための処置です。
装置が壊れるのを防ぐため、意図的に奥歯のかみ合わせを調整している場合があります。この状態は永続的なものではなく、治療の進行とともに改善していきます。装置装着後しばらくの間は、どなたも食事がしにくい状態が続きます。
この期間は柔らかい食品を選んで召し上がることをおすすめします。例えば、おかゆ、うどん、スープ、ヨーグルト、豆腐などが適しています。数週間から数ヶ月で徐々に慣れていきますので、ご安心ください。ただし、症状が長期間続く場合や痛みが強い場合は、担当医に相談することをおすすめします。
歯と歯茎の両方が出ています。裏側矯正で治療できますか?
歯や歯茎が突出している症状は、裏側矯正で治療可能です。見た目が気になる方には特におすすめの治療法です。
裏側矯正は装置が歯の裏側に付くため、治療中でも他人に気づかれにくいという大きなメリットがあります。接客業の方や人前に出る機会が多い方に適しています。また、白いセラミック製の装置と白いワイヤーを使用した目立たない表側矯正という選択肢もあります。
ただし、具体的な治療方法や治療期間については、レントゲンや歯型などの資料をもとにした検査・診断が必要です。症状の程度によって最適な治療法が異なるため、まずは専門医による診断を受けることをおすすめします。写真撮影や人前で話すことへの不安は、治療によって解消できる可能性が高いです。
金属アレルギーがあります。裏側矯正は可能ですか?
金属アレルギーをお持ちの方でも、裏側矯正は可能な場合があります。現在はアレルギーに配慮した素材を使用した治療法があります。
多くの矯正装置ではチタン製のハイテクワイヤーを使用しています。チタンは金属アレルギーを起こしにくい素材として知られています。また、装置自体はセラミック製のものもあり、金属との接触を最小限に抑えることができます。ただし、完全に金属を使わない治療は難しい場合もあります。
もし金属アレルギーの心配があるようでしたら、治療開始前に歯科大学付属病院などで金属アレルギーの検査を受けることを強くおすすめします。検査により、どの金属に反応するかを特定できれば、その金属を避けた治療計画を立てることができます。安全に治療を進めるためにも、事前の検査をご検討ください
裏側矯正をすると楽器が吹けなくなりますか?
裏側矯正でも楽器の演奏は可能です。最初は吹きにくさを感じますが、慣れれば通常通り演奏できるようになります。
トランペット、サックス、フルートなどの管楽器は、表側矯正でも演奏可能です。裏側矯正の場合も同様に、楽器の種類によりますが演奏できる場合がほとんどです。装置装着直後は違和感があり、音の出し方や指の位置に慣れるまで時間がかかることがあります。
しかし、多くの方が1~2週間程度で慣れてきます。プロの演奏家の方でも矯正治療を受けながら演奏を続けている例は多くあります。ただし、楽器の種類や演奏のレベルによって影響の程度は異なりますので、心配な場合は事前に担当医に相談し、実際の装置で試してみることをおすすめします。
受け口でも裏側矯正はできますか? 治療期間は表側より長くなりますか?
受け口(下顎前突)の場合でも、多くのケースで裏側矯正が可能です。治療期間も表側矯正とあまり変わりません。
症例によっては裏側矯正が適さない場合もありますが、大半の方は裏側からの治療が可能です。特に下の前歯が内側に傾斜している場合は、裏側矯正が難しいことがあります。そのような場合は、上顎は裏側、下顎は表側というコンビネーション治療も選択肢になります。
治療期間については、一般的に裏側も表側もあまり変わらず、約1~3年程度です。ただし、治療方法によっては半年から1年ほど長くなることもあります。具体的な治療方法や期間を決定するには、レントゲンや歯型などの資料による検査・診断が必要です。まずは専門医に相談し、ご自身に最適な治療法を見つけることをおすすめします。
開咬(前歯が噛み合わない)は裏側矯正で治りますか?
開咬の症状は裏側矯正で治療可能な場合が多くあります。ただし、症例によって適した治療法が異なります。
開咬とは、奥歯を噛み合わせても前歯が閉じない状態のことです。理論上は裏側からも表側からも同じ治療方法が適用できますが、すべての症例に裏側矯正が適しているわけではありません。歯の傾斜角度、骨格の状態、開咬の程度などによって判断が必要です。
具体的な治療方法、治療期間、どの矯正方法が最適かを決定するには、レントゲン、歯型、写真などの詳細な検査と診断が必要不可欠です。検査によって初めて、裏側矯正が適しているかどうかが明確になります。開咬でお悩みの方は、まず専門医による診断を受けることをおすすめします。適切な治療法で、しっかりとした噛み合わせを作ることができます。
出っ歯を裏側矯正で治したいのですが、どのくらい改善できますか?
出っ歯(上顎前突)の改善度合いは、現在の歯の状態によって異なります。正確な判断には専門的な診断が必要です。
専門クリニックでは、たくさんの写真、歯型、レントゲン、その他様々な資料を集めて総合的に診断します。この診断によって、どの程度改善できるか、どのような治療方法が最適か、治療期間はどのくらいかかるかが明確になります。裏側矯正の治療期間は一般的に1~3年程度です。
上顎前突は裏側矯正の良い適応症であることが多く、見た目を気にせず治療できるメリットがあります。ただし、骨格的な問題が大きい場合や、歯の傾斜が著しい場合は、外科矯正治療が必要になることもあります。まずはカウンセリングと診断を受けて、ご自身の状態と治療の可能性について詳しく知ることをおすすめします。
前歯に隙間があり、少し受け口気味です。裏側矯正で治せますか?
前歯の隙間(正中離開)と軽度の受け口は、裏側矯正で治療できる可能性が高いです。
前歯に2~3mm程度の隙間がある場合、矯正治療で改善できます。受け口の程度が軽度であれば、裏側矯正での対応が可能です。ただし、実際に拝見していない状態での判断には限界がありますので、確実な判断には診察が必要です。
裏側矯正は装置が見えないため、治療中も見た目を気にせず日常生活を送れるというメリットがあります。前歯の隙間は比較的短期間で改善することも多い症状です。受け口の程度によっては、骨格的な要因が関係している場合もありますので、レントゲンなどによる詳細な検査が重要です。まずは専門医に相談し、ご自身の症状に最適な治療法を見つけることをおすすめします。
矯正治療5年目ですが、片方でしか噛めず、頬の内側を噛んでしまいます。これで装置を外して大丈夫でしょうか?
治療終了間際に左右の噛み合わせが均等でなく、頬を噛む症状がある場合は、装置を外す前に担当医としっかり相談することが重要です。
理想的な状態は、無理のない楽な状態で左右の歯が均等に噛み合うことです。片方だけで噛む状態が続くと、顎の疲れや顎関節症のリスクが高まります。頬の内側を噛む原因は、骨格的な左右非対称や歯のサイズのアンバランスなどが考えられます。老化だけが原因ではありません。
長年お世話になっている先生に意見を言いにくいお気持ちは理解できますが、後で後悔しないためにも、現在の状態について率直に相談することをおすすめします。必要であれば、セカンドオピニオンを求めることも一つの選択肢です。治療結果に納得してから装置を外すことが、長期的な満足度につながります。
裏側矯正では発音に障害が出ると聞きました。歌のレッスンがあるので心配です。
裏側矯正では一時的に発音しづらくなりますが、ほとんどの方は1~2週間程度で慣れます。ただし、個人差があります。
装置を装着すると、舌が装置に触れるため、特にサ行、タ行、ラ行などの発音がしにくくなることがあります。舌足らずのような感じになるという表現は正確です。しかし、これは永続的なものではなく、舌が装置の存在に慣れることで改善していきます。声の大きさ自体には影響しません。
芸能活動をされている方や接客業の方で、発音が特に重要な場合は、表側の目立たない白いセラミック製装置も選択肢になります。また、症例によっては差し歯のような方法で治療できる場合もあります。レッスンや仕事への影響を考慮して、担当医と十分に相談し、ご自身のライフスタイルに合った治療法を選ぶことをおすすめします。
裏側矯正と表側矯正では、費用や期間、効率に違いがありますか?
裏側矯正と表側矯正では、治療期間や効果に大きな違いはありませんが、装置や技工方法に違いがあります。
治療期間については、裏側も表側も大きくは変わらず、一般的に1~3年程度です。治療の効率や最終的な仕上がりも、適切に行えば同等の結果が期待できます。主な違いは見た目の問題で、裏側矯正は治療中でもほとんど気づかれないという大きなメリットがあります。
一方、裏側矯正は装置がオーダーメイドになること、技術的な難易度が高いことなどから、一般的に費用は高くなる傾向があります。また、装着直後の違和感や発音への影響は、裏側矯正の方がやや大きいと言えます。どちらの方法が適しているかは、症状やライフスタイルによって異なりますので、専門医に相談して決めることをおすすめします。
前歯がセラミックの差し歯です。裏側矯正は可能ですか?
前歯がセラミックの差し歯(被せ物)であっても、裏側矯正は可能です。虫歯治療で神経を抜いた歯でも問題ありません。
差し歯に矯正装置を接着することは技術的に可能です。ただし、天然歯と比べて接着力がやや弱くなる可能性があるため、装置が外れやすくなることがあります。また、装置を外す際に差し歯の表面を傷つけないよう、慎重な処置が必要です。
前歯の横の歯を抜歯している場合でも、矯正治療は可能です。抜歯部位を利用して歯を移動させることができます。具体的な治療方法、治療期間については、レントゲンや歯型などの検査・診断後に決定します。差し歯がある場合は、矯正治療後に新しい差し歯に作り直す必要が出てくることもありますので、治療計画全体を担当医と相談することをおすすめします。
受け口の治療中ですが、発音が悪くなるので下の裏側矯正をやめたいです。手術だけで治せますか?
外科手術のみで受け口を治すことは、しっかりとした噛み合わせを作る観点からおすすめできません。矯正治療と組み合わせることが重要です。
顎の骨格的なズレと歯の噛み合わせの問題を同時に解決するには、外科矯正治療(外科手術と矯正治療の組み合わせ)が適しています。手術だけでは顎の位置を変えることはできても、正確な噛み合わせを作ることが困難です。発音に関しては、実は上顎の装置の方が影響が大きく、下顎の装置はそれほど発音に影響しません。
口が横にずれている状態も、矯正治療と外科手術の組み合わせで改善できます。外科矯正治療は裏側からの装置でも可能です。初めの診断どおりに治療を進めることが、最良の結果につながります。発音への不安がある場合は、装置の調整などで改善できることもありますので、まずは担当医に相談してみることをおすすめします。
裏側矯正はどこの歯科医院でも受けられますか? デメリットも教えてください。
裏側矯正は専門的な技術が必要なため、一部の歯科医院でしか受けることができません。
裏側矯正は表側矯正に比べて技術的な難易度が高く、特殊な装置や技工方法を必要とします。そのため、この治療法を提供している歯科医院は限られています。治療を受けられる医院については、直接クリニックに問い合わせて確認することをおすすめします。
デメリットとしては、(1)装着直後の違和感が表側よりやや大きい、(2)発音がしにくくなる期間がある(1~2週間程度)、(3)舌に装置が当たる違和感がある、(4)歯磨きがしにくい、(5)費用が表側より高額になる傾向がある、などが挙げられます。ただし、最近の装置は小型化されており、違和感は以前より大幅に軽減されています。症状によって適応の可否が異なりますので、専門医に相談して判断することが重要です。
保定装置(リテーナー)は、裏側と表側のどちらが効果的ですか?
保定装置は裏側からのタイプでも表側からのタイプでも、効果に大きな違いはありません。担当医が勧める装置で十分です。
保定装置(リテーナー)にはさまざまな種類があり、患者さんの症状や生活スタイルに応じて使い分けることができます。裏側からワイヤーで固定するタイプ、表側からワイヤーで固定するタイプ、透明な歯型をはめるマウスピースタイプなどがあります。どのタイプも適切に使用すれば、後戻りを防ぐ効果は同等です。
重要なのは、装置の種類よりも、指示された時間きちんと装着し続けることです。保定期間を怠ると、せっかく治療した歯が元に戻ってしまう可能性があります。出っ歯などの後戻りが心配な場合は、その旨を担当医に伝えれば、より強固な保定方法を提案してもらえます。ご心配な点があれば、遠慮なく担当医に相談することをおすすめします。
奥歯に金属の輪っかがついていません。これで大丈夫ですか?
奥歯のバンド(金属の輪っか)を使用するかどうかは、治療計画によって異なります。バンドなしでも治療は可能です。
奥歯のバンドは、装置をしっかり固定するために使用されることがありますが、最近の矯正治療では使用しない方法も増えています。バンドを使わず、直接歯に装置を接着する方法もあり、どちらの方法も効果的です。治療方針は患者さんの症状、歯の状態、治療目標などによって個別に決定されます。
バンドを使用しない場合のメリットとしては、(1)装着時の違和感が少ない、(2)歯と歯の間に隙間ができにくい、(3)見た目がすっきりする、などがあります。逆にバンドを使用する場合は、装置の固定がより確実になるというメリットがあります。担当医はあなたの症状に最適な方法を選択していますので、ご心配であれば詳しい説明を求めることをおすすめします。
他院で受け口の裏側矯正は難しいと言われました。本当に不可能ですか?
受け口でも裏側矯正が可能な場合は多くあります。ただし、歯の傾斜によっては適さないケースもあります。
下顎前突(受け口)の場合、下の前歯が内側に倒れていることが多く、そのような場合は裏側矯正が技術的に難しくなることがあります。しかし、すべての受け口が裏側矯正に適さないわけではありません。上顎は裏側、下顎は表側というコンビネーション治療も選択肢の一つです。
また、白いセラミック製の装置と白いワイヤーを使用した目立たない表側矯正という方法もあります。前に装置をつけることへの抵抗がある場合でも、目立ちにくい装置であれば受け入れやすいかもしれません。一つの医院で難しいと言われても、他の専門医の意見を聞くこと(セカンドオピニオン)も有効です。まずは裏側矯正を得意とする複数の歯科医院で相談してみることをおすすめします。
裏側矯正ができない歯並びはありますか?
ほとんどの歯並びで裏側矯正は可能ですが、歯の傾斜角度や治療計画によって適さない場合もあります。
裏側矯正が難しいケースとしては、(1)歯が極端に内側に傾いている場合、(2)歯が非常に小さい場合、(3)歯の裏側のスペースが極端に狭い場合、(4)重度の骨格的な問題がある場合、などが挙げられます。しかし、技術の進歩により、以前は難しいとされていた症例でも対応できるケースが増えています。
理論上は表側も裏側も治療方法は同じですが、装置の装着位置が異なるため、症例によって向き不向きがあります。具体的な治療方法や、裏側矯正が可能かどうかの判断には、レントゲンや歯型などの詳細な検査・診断が必要です。まずは裏側矯正を専門とする歯科医院で診断を受けることをおすすめします。
裏側矯正は本当に目立ちませんか? 違和感はありますか?
裏側矯正は装置が歯の裏側にあるため、ほとんど目立ちません。違和感は個人差がありますが、1~2週間で慣れる方が多いです。
見た目については、正面から見てもほぼわかりません。大きく口を開けて笑っても、よほど注意深く見ない限り気づかれることはありません。治療していることを他人に知られたくない方には最適な方法です。
違和感については、最近の装置は一人ひとりに合わせたオーダーメイドで、歯にピッタリ合うように作られているため、以前の装置よりも大幅に小型化され、違和感は少なくなっています。ただし、装着直後は舌が装置に触れる感覚があり、発音しにくさを感じることがあります。多くの方は約1~2週間で慣れてきますが、個人差があります。慣れるまでの期間は、柔らかい食事を選ぶなどの工夫をすることで、快適に過ごすことができます。
裏側矯正は子供にもできますか?
裏側矯正は永久歯が生え揃った段階(第二期治療)であれば、子供さんでも可能です。
子供さんの矯正治療は、乳歯が残っている段階の第一期治療と、永久歯だけになった第二期治療に分けられます。第一期治療では顎の成長をコントロールする治療が中心となり、取り外しできる装置などを使用することが多いため、裏側矯正は一般的に行いません。
第二期治療は、すべての永久歯が生え揃った段階(通常12~14歳頃)から開始します。この段階であれば、成人と同じように裏側矯正が可能です。ただし、歯のサイズが小さい場合や、歯の裏側のスペースが狭い場合は、装置の装着が難しいこともあります。お子さんの歯並びや骨格の状態によって最適な治療時期と方法が異なりますので、まずは矯正専門医に相談し、診断を受けることをおすすめします。
費用
治療費の相場は、150〜180万円です。
なお、治療に着手する前の相談費用については無料のところがほとんどなので、治療のご相談は、お気軽にお越しいただければと思います。
医師からのコメント
裏側装着方式は、従来の治療法の利点を損なうことなく目立ちにくくしたのが特徴です。
装置の取り付けが難しいなど、施術自体の難度が高くなることから費用は高いのが難点です。
そこで、目立ちやすい上顎のみ裏側から治療し、下顎は通常の表側から治療を行うハーフリンガルという選択肢もあります。
裏側からの治療に関心のある方は、相談だけにでもいらしてください。