マウスピース矯正
マウスピース矯正とは、透明なプラスチック製のマウスピースを段階的に交換しながら歯を移動させる矯正治療法です。
「インビザライン」や「クリアライナー」とも呼ばれ、従来のワイヤー矯正と異なり、取り外し可能で目立たないのが最大の特徴です。
コンピューターシミュレーションにより治療計画を立案し、患者さま一人ひとりに合わせたオーダーメイドの装置を製作します。

このような方に向いています
目立たない矯正治療を希望される方
人前に出る機会が多い方
金属アレルギーのある方
装置を取り外して食事を楽しみたい方
歯磨きを普段通り行いたい方
ワイヤー矯正に抵抗がある方
痛みを最小限に抑えたい方

このような方には注意が必要です
装着時間を守れない方
重度の歯並びの乱れがある方
自己管理が困難な方
頻繁に装置を紛失する可能性のある方
複雑な歯の移動が必要な方
成長期のお子さま(症例による)

治療の特徴
マウスピース矯正の特徴は次のとおりです。
透明で目立たない審美性
取り外し可能な利便性
金属を使用しない安全性
従来の矯正より少ない痛み
食事制限がない快適性
治療結果の事前確認が可能
マウスピース矯正の種類と特徴
- 1
インビザライン
世界最大手のマウスピース矯正システムで、1,000万人以上の治療実績があります。
3Dシミュレーションにより治療開始前に最終的な歯並びを確認できるのが特徴です。
- 2
インビザライン・ライト
軽度から中等度の歯並びの乱れに適応する治療期間短縮版です。
マウスピースの枚数が14枚以内で、約7ヶ月で治療が完了します。
- 3
インビザライン・エクスプレス
前歯部の軽微な修正に特化したシステムです。
マウスピースは7枚以内で、約3ヶ月という短期間での治療が可能です。
- 4
その他のマウスピース矯正
アソアライナー、クリアコレクト、スマイルトゥルーなど、症例に応じて最適なシステムを選択します。
適応症例
叢生(でこぼこ・八重歯)
前歯部の軽度な重なりや捻転に効果的です。
抜歯を必要としない症例では優れた結果が得られます。
軽度から中等度の空隙歯列
歯と歯の間の隙間を段階的に閉鎖していきます。
隙間の総量が7mm以下の症例で良好な結果が期待できます。
軽度の開咬
奥歯でしか咬めない開咬の改善に有効です。
舌癖の改善指導と併用することで効果が高まります。
軽度の反対咬合
下顎前歯が上顎前歯より前に出ている症例に適応があります。
骨格的な問題がない場合に効果的です。
後戻りの改善
他の矯正治療後の軽度な後戻りの修正に適しています。
短期間で理想的な位置に戻すことが可能です。
治療方法の詳細
- 1
治療計画の立案
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口腔内スキャナーまたは従来の印象採得により歯型を取得します。
3Dデジタル技術により、治療開始から完了までの歯の移動をシミュレーションします。
- 2
マウスピースの製作
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患者さま専用のマウスピースを段階的に製作します。
各ステージで約0.25mmずつ歯を移動させる設計になっています。
- 3
装着とメンテナンス
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1日20-22時間の装着が必要です。
食事と歯磨き時以外は常に装着していただきます。
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定期的な交換
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約1-2週間ごとに新しいマウスピースに交換します。
段階的な歯の移動により、無理なく理想的な歯並びに導きます。
期待できる効果
審美的改善
透明な装置により、治療中も自然な笑顔を保てます。 周囲に気づかれることなく歯並びを改善できます。
機能的改善
正常な咬合が獲得され、咀嚼機能が向上します。 発音の改善も期待できます。
口腔衛生の向上
取り外し可能なため、普段通りの歯磨きが可能です。
虫歯や歯周病のリスクを最小限に抑えられます。
快適性の向上
金属を使用しないため、口内炎などのトラブルがありません。
食事制限がなく、好きなものを自由に食べられます。
心理的効果
目立たない治療により、治療中のストレスが軽減されます。
自信を持って人前に出ることができます。
リスク・副作用
※装着時間が不足すると治療期間が延長することがあります。
※マウスピースの変色や破損が起こることがあります。
※重度の症例では治療結果に限界があります。
※治療中にマウスピースを紛失するリスクがあります。
※アタッチメント周囲の清掃不良により虫歯のリスクが高まります。
※治療計画の変更により追加のマウスピースが必要になることがあります。
※保定装置を使用しないと後戻りのリスクがあります。
マウスピース矯正の相談事例集
マウスピース矯正で治せない症例はありますか?
重度の骨格性不正咬合や複雑な歯の移動が必要な症例では、マウスピース矯正の適応が困難な場合があります。
骨格性不正咬合とは、顎の骨自体の大きさや位置に問題がある状態を指します。このような場合は、外科手術を伴う矯正治療や、ワイヤーを使用したマルチブラケット装置による治療が適している場合があります。また、歯を大きく回転させる必要がある場合や、歯根を平行移動させる必要がある複雑な症例でも、マウスピース矯正では限界があることがあります。
軽度から中等度の歯並びの乱れ、すきっ歯、軽度の出っ歯や受け口、矯正治療後の後戻りなどは、マウスピース矯正の良い適応症です。具体的にマウスピース矯正が可能かどうかは、レントゲンや歯型などの精密検査を行い、診断する必要があります。まずは専門医に相談し、ご自身の症状がマウスピース矯正に適しているかどうかを確認することをおすすめします。
1日何時間装着する必要がありますか?
マウスピース矯正では、1日20~22時間以上の装着が必要です。食事と歯磨きの時以外は基本的に装着してください。
マウスピース矯正は、装着時間が治療効果に直結します。装着時間が短いと、歯が計画通りに移動せず、治療期間が延びたり、治療効果が得られなかったりする可能性があります。逆に、しっかりと装着時間を守ることで、予定通りのスケジュールで治療を進めることができます。
食事の際は必ずマウスピースを外してください。装着したまま食事をすると、マウスピースが破損したり、着色したり、食べ物がマウスピースと歯の間に挟まって虫歯のリスクが高まります。飲み物については、水やお茶など無色透明なものであればそのまま飲むこともできますが、糖分を含む飲み物や着色しやすい飲み物は外してから飲むことをおすすめします。装着時間をしっかり守ることが、マウスピース矯正成功の鍵となります。
マウスピース矯正で痛みはありますか?
新しいマウスピースに交換した際に軽度の締め付け感や違和感がありますが、従来のワイヤー矯正に比べて痛みは少ないです。
マウスピース矯正では、1~2週間ごとに新しいマウスピースに交換していきます。新しいマウスピースに交換した直後は、歯に力がかかるため締め付けられるような感覚や、軽い痛みを感じることがあります。しかし、これは歯が正しい位置に移動している証拠であり、正常な反応です。通常、この違和感は2~3日程度で軽減していきます。
ワイヤー矯正では金属の装置が頬や舌に当たって口内炎ができることがありますが、マウスピース矯正ではそのようなトラブルは少ないです。また、ワイヤー調整時の強い痛みもありません。軽度の痛みは正常な反応ですが、もし強い痛みが続く場合や、マウスピースが歯茎に食い込んで痛む場合は、すぐにクリニックに連絡してください。調整や確認が必要な場合があります。
治療期間はどのくらいですか?
治療期間は症例によって異なりますが、一般的に6ヶ月~2年程度です。軽度な症例では短期間での治療が可能です。
前歯の軽度なガタガタやすきっ歯などの比較的単純な症例では、6ヶ月~1年程度で治療が完了することもあります。一方、全体的な噛み合わせの改善が必要な場合や、歯を大きく移動させる必要がある場合は、1年半~2年程度かかることがあります。
治療期間は、歯並びの状態、歯を動かす距離、抜歯の有無、装着時間の遵守状況などによって変わります。特に装着時間を守ることは重要で、1日20~22時間の装着を守らないと、計画通りに歯が動かず治療期間が延びてしまいます。具体的な治療期間については、精密検査を行い、3Dシミュレーションなどで治療計画を立てた後に明確になります。まずはカウンセリングで、ご自身の症例ではどのくらいの期間が必要かを確認することをおすすめします。
マウスピース矯正では食事制限はありますか?
マウスピースを外して食事をするため、食事制限は一切ありません。好きなものを自由に食べることができます。
ワイヤー矯正では、硬い食べ物(せんべい、ナッツ類など)や粘着性の高い食べ物(キャラメル、ガム、お餅など)を食べると装置が壊れたり外れたりする可能性があるため、食事制限があります。しかし、マウスピース矯正は食事の際に取り外すため、このような制限がありません。
食事の際は必ずマウスピースを外し、食後は歯磨きをしてからマウスピースを装着してください。もし外出先などで歯磨きができない場合は、少なくとも口をよくすすいでからマウスピースを装着することをおすすめします。食べかすが残ったままマウスピースを装着すると、虫歯のリスクが高まります。食事制限がないことは、マウスピース矯正の大きなメリットの一つです。食生活を変えることなく、矯正治療を進めることができます。
マウスピース矯正をすると話しにくくなりますか?
装着初期に軽度の発音の変化がありますが、ほとんどの方は数日で慣れます。
マウスピースは非常に薄く作られていますが、装着直後は口の中に異物がある感覚があり、特にサ行やタ行の発音がしにくくなることがあります。舌がマウスピースに触れるため、いつもと違う感覚になるためです。しかし、これは一時的なもので、多くの方が2~3日から1週間程度で慣れてきます。
裏側矯正(リンガル矯正)では、装置が舌に直接触れるため発音への影響が大きく、慣れるまで1~2週間程度かかることがありますが、マウスピース矯正はそれよりも影響が少ないです。接客業や営業職など、話すことが多い仕事をされている方でも、ほとんどの場合は問題なく使用できています。どうしても気になる場合は、大事な会議やプレゼンテーションの直前を避けて治療を開始するなどの工夫も可能です。
マウスピースは見えますか?
透明な素材で作られているため、装着していても周囲に気づかれにくいです。矯正治療をしていることを知られたくない方に最適です。
マウスピースは医療用の透明なプラスチック素材で作られており、歯に密着するように設計されています。そのため、よほど近くで注意深く見ない限り、装着していることに気づかれることはほとんどありません。会話中や笑った時でも目立ちにくいという特徴があります。
ワイヤー矯正の場合、金属製の装置や白いセラミック製の装置でも、ある程度は目立ってしまいます。裏側矯正は見えませんが、費用が高額になります。マウスピース矯正は、見た目の目立ちにくさと比較的手頃な価格のバランスが取れた治療法と言えます。結婚式や就職活動、人前に出る仕事など、見た目が気になる場面がある方には特におすすめです。ただし、マウスピースが歯に密着しているため、歯の表面に小さなアタッチメント(突起)をつける場合があり、その場合はわずかに目立つことがあります。
虫歯治療中でもマウスピース矯正を始められますか?
虫歯治療が完了してからマウスピース矯正を開始する必要があります。治療中の歯の形が変わってしまうためです。
マウスピースは現在の歯の形に合わせてオーダーメイドで作製されます。虫歯治療を行うと詰め物や被せ物により歯の形が変わってしまうため、作製したマウスピースが合わなくなってしまいます。そのため、矯正治療を始める前に、虫歯や歯周病などの治療を完了させておく必要があります。
矯正治療前の検査で虫歯が見つかった場合は、まず虫歯治療を行い、治療が完了してから改めて歯型を取り、マウスピースを作製します。また、矯正治療中に虫歯ができた場合も、治療により歯の形が変わるため、マウスピースの再作製が必要になることがあります。矯正治療中は特に念入りに歯磨きをして、虫歯予防に努めることが重要です。マウスピースは取り外しができるため、ワイヤー矯正に比べて歯磨きがしやすく、虫歯予防がしやすいというメリットがあります。
マウスピース矯正に年齢制限はありますか?
永久歯が生え揃っていれば、年齢に関係なく治療が可能です。10代から60代以上の方まで幅広く治療を受けられます。
子供の場合は、すべての永久歯が生え揃う12~14歳頃以降であれば、マウスピース矯正が可能です。乳歯が残っている段階では、歯の生え変わりによってマウスピースが合わなくなるため、適していません。成人の場合は、歯と歯茎が健康であれば何歳でも矯正治療が可能です。
ただし、年齢が高くなるにつれて、歯周病のリスクが高まるため、矯正治療を始める前に歯周病の検査と治療が必要になることがあります。また、骨の代謝が緩やかになるため、若い方に比べて歯の移動に時間がかかる場合があります。それでも、適切な治療計画と丁寧なケアを行えば、年齢に関係なく良好な結果を得ることができます。「矯正治療は若い時にしかできない」というのは誤解です。何歳からでも、美しい歯並びと正しい噛み合わせを手に入れることができます。
他院での矯正治療後の後戻りも治せますか?
軽度から中等度の後戻りであれば、マウスピース矯正で改善が可能です。
矯正治療後に保定装置(リテーナー)の装着を怠ったり、親知らずの影響などで歯並びが後戻りしてしまうことがあります。特に前歯のガタガタやすきっ歯の再発など、軽度な後戻りはマウスピース矯正の良い適応症です。以前の矯正治療で抜歯をしていても、後戻りの改善は可能です。
ただし、後戻りの程度が大きい場合や、噛み合わせに大きな問題がある場合は、マウスピース矯正では対応できず、再度ワイヤー矯正が必要になることもあります。また、後戻りの原因(親知らずの圧迫、舌癖、歯ぎしりなど)がある場合は、その原因を解決しないと、再度後戻りしてしまう可能性があります。
後戻りの治療が完了した後は、必ず保定装置を使用して、きれいになった歯並びを維持することが重要です。まずは診察を受けて、現在の状態がマウスピース矯正で改善できるかどうかを確認することをおすすめします。
マウスピースを紛失した場合はどうすればよいですか?
紛失した場合は、すぐにクリニックに連絡してください。前のステージのマウスピースを装着し、新しいものを再製作します。
マウスピースを紛失した場合、そのまま放置すると歯が元の位置に戻ってしまう可能性があります。まずは一つ前のステージのマウスピースを装着して、歯の位置を保つようにしてください。そして、できるだけ早くクリニックに連絡し、紛失したステージのマウスピースを再製作する必要があるかどうかを相談してください。
治療の進行状況によっては、一つ前のステージに戻って治療を続けたり、次のステージに進んだりすることもあります。マウスピースの再製作には時間がかかることがあるため、紛失しないよう専用のケースに入れて保管することが重要です。外出先で食事をする際は、ティッシュに包んで置いておくと誤って捨ててしまうことがあるため、必ずケースに入れるようにしてください。予備のマウスピースを持ち歩くことも、紛失のリスクを減らす良い方法です。
海外旅行中はどうすればよいですか?
海外旅行の際は、予備のマウスピースをお渡しします。長期滞在の場合は事前にご相談ください。
短期間の旅行であれば、現在使用しているマウスピースと、次のステージのマウスピースを持参していただければ問題ありません。万が一、紛失や破損した場合に備えて、予備のマウスピースがあると安心です。また、マウスピース専用の洗浄剤や保管ケースも忘れずに持参してください。
長期間の海外滞在の場合は、事前にクリニックに相談してください。滞在期間中に必要な複数ステージのマウスピースをまとめてお渡しすることも可能です。ただし、定期的なチェックが受けられないため、治療計画通りに進まないリスクもあります。もし海外でマウスピースを紛失したり破損したりした場合は、すぐにクリニックに連絡してください。
海外にいても、メールや写真での相談が可能な場合もあります。旅行中も1日20~22時間の装着時間を守り、食後の歯磨きを忘れないようにすることが大切です。
マウスピースの手入れ方法を教えてください。
マウスピース専用の洗浄剤または中性洗剤で清掃してください。熱湯での洗浄は変形の原因となるため絶対に避けてください。
毎日のお手入れとしては、マウスピースを外したら、水で軽くすすぎ、柔らかい歯ブラシで優しくブラッシングしてください。この際、歯磨き粉は使用しないでください。歯磨き粉に含まれる研磨剤がマウスピースに細かい傷をつけ、曇りや着色の原因になります。週に数回は、マウスピース専用の洗浄剤を使用して、より念入りに洗浄することをおすすめします。
熱湯や熱いお湯で洗うと、マウスピースが変形して使えなくなってしまいます。必ず水またはぬるま湯を使用してください。また、直射日光の当たる場所や高温になる場所での保管も避けてください。清潔に保つことで、口臭や虫歯のリスクを減らすことができます。外出先では、専用のケースに入れて保管し、ティッシュに包んだりそのままテーブルに置いたりしないようにしましょう。適切なお手入れをすることで、マウスピースを清潔に保ち、快適に治療を進めることができます。
治療中に歯が痛くなったらどうすればよいですか?
新しいマウスピースに交換した直後の軽度な痛みや締め付け感は正常な反応です。強い痛みが続く場合はクリニックに連絡してください。
マウスピースを新しいものに交換すると、歯に力がかかるため、2~3日程度は軽い痛みや違和感を感じることがあります。これは歯が動いている証拠であり、心配する必要はありません。痛みが気になる場合は、柔らかい食事を選んだり、必要に応じて市販の鎮痛剤を使用したりすることもできます。
ただし、強い痛みが数日以上続く場合、マウスピースが歯茎に食い込んで痛む場合、特定の歯だけが激しく痛む場合などは、何か問題がある可能性があります。無理に装着を続けず、クリニックに連絡して指示を仰いでください。マウスピースの調整や、治療計画の見直しが必要な場合があります。
また、虫歯や歯周病による痛みの可能性もありますので、痛みの原因を特定することが重要です。定期的なチェックアップを受けることで、トラブルを早期に発見し、対処することができます。
医師からのコメント
マウスピース矯正は、現代のライフスタイルに最も適した矯正治療法の一つです。
目立たない審美性と取り外し可能な利便性により、多忙な社会人の方にも無理なく治療を受けていただけます。
ただし、治療成功の鍵は患者さまの協力にあります。装着時間の遵守と定期的な通院が重要です。
近年の技術進歩により、従来では困難とされた症例にも適応が拡大されています。
軽度から中等度の歯並びの問題であれば、優れた治療結果が期待できます。
まずは3Dシミュレーションで治療後の歯並びをご確認いただき、理想的な笑顔を一緒に実現しましょう。
患者さまのライフスタイルに合わせた最適な治療プランをご提案いたします。
