出っ歯矯正とは
出っ歯は、上顎前突症ともよばれる歯列不正の一種です。
前歯の位置や傾きに原因のある歯性上顎前突症と、顎の骨格に原因のある骨格性上顎前突症、その両方のタイプに分けられます。
出っ歯矯正は、それらの改善を目的とした矯正治療です。

このような方に向いています
前歯が前に出ている方
上顎と下顎の前歯が噛み合わせられない方
横顔をきれいに整えたい方
口がよく開いている方
アスリートの方
口呼吸になってしまう方

このような方には向いていません
定期的な歯科受診ができない方
ブラッシングの習慣のない方
未治療の虫歯や歯周病のある方
矯正治療へのモチベーションのないお子さん
抜歯したくない方

治療の特徴
歯性上顎前突症は歯列矯正だけで改善できるが、前歯の位置や傾きによっては抜歯が必要
骨格性上顎前突症は口腔外科や形成外科と連携した顎矯正手術が必要
使用機器
出っ歯矯正は以下にあげる矯正機器を使用します。
シームレスバンド(帯環)
シームレスバンドは、マルチブラケット矯正に用いられる大臼歯に装着する金属製のバンドです。バッカルチューブという金属製のチューブと組み合わせて使います。ヘッドギアという装置と併用することがあります。
ブラケット
ブラケットは、マルチブラケット矯正で使われる歯の表面に装着する金具です。金属製が一般的ですが、目立ちにくい白色のプラスチック製やセラミック製のブラケットもあります。
アーチワイヤー
アーチワイヤーは、マルチブラケット矯正で使う形状記憶合金製のワイヤーで、ブラケットにある溝とシームレスバンドのバッカルチューブに通して使います。歯列不正の歯並びにアーチワイヤーを装着するとワイヤーが変形します。
変形したワイヤーが元の形に戻ろうとする働きで歯を移動させていきます。ワイヤーの弾性で歯の移動をします。
結紮線・オーリング
結紮線やオーリングは、アーチワイヤーをブラケットに固定するために使うものです。歯科用アンカースクリュー
歯科用アンカースクリューは、チタンで作られた小さな木ねじのような形状の矯正装置です。マルチブラケット矯正などと組みわせて使われます。
アライナー
アライナーは、マウスピース矯正で使うマウスピースののことです。一般的にマウスピースとよばれていますが、正式名称はアライナーです。
アタッチメント
アタッチメントは、マウスピース矯正で使う歯の表面につける小さな突起状の矯正装置です。マウスピース矯正で、マウスピース単独では歯をきれいに並べるのが難しいときに使います。
チューイー
マウスピース矯正で、マウスピースを歯にしっかり嵌め込むために使う器具です。期待できる効果
出っ歯治療で期待できる効果は次の通りです。
前歯の歯並びがきれいになる
出っ歯を矯正治療で整えると、前歯の歯並びがきれいになります。
前歯で噛めるようになる
出っ歯の多くは、上下の前歯が噛み合っていないので、前歯で食べ物を噛み切ることが難しいです。
出っ歯矯正で前歯の歯並びが良くなると、上下の前歯が噛み合うようになるので、前歯で食べ物を噛めるようになります。
横顔もきれいになる
出っ歯の方の横顔は、鼻のあたりが前に出ていて、アンバランスな感じなっていることが多いです。
出っ歯矯正を受ければ、前歯の歯並びだけでなく、横顔のバランスもきれいに整えられます。
前歯がケガしにくくなる
出っ歯の方は、前歯が前に出ている、もしくは前に傾いているので、転倒時やぶつかったときに前歯に外力がかかりやすく、前歯が折れたり、欠けたりしやすいです。
出っ歯矯正で前歯の位置や傾きを整えれば、前歯に外力が集中するのを防げるので、前歯がケガしにくくなります。
注意事項
出っ歯治療には次のような注意点があります。
歯磨きが難しくなる
出っ歯治療に限ったことではありませんが、矯正治療中は矯正装置が歯に装着される関係で、歯磨きが難しくなります。矯正治療前よりも時間をかけてていねいに歯を磨かなければ、歯をきれいに保つことができません。
虫歯や歯周病の
リスクが高まる
虫歯や歯周病は、歯の表面についているプラークの中にいる細菌が原因で起こる病気です。矯正治療中は歯磨きが難しくなるので、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
定期的な通院を忘れない
矯正治療中は、1ヶ月おきなど、定期的な通院が必要です。これは、治療の進捗状況を確認すると同時に、矯正装置を調整するためです。
可能な限り、歯科医院側から指示された通院日に歯科医院に通うようにしましょう。
治療を受けられない方
次のような方は、出っ歯治療を受けることができません。
01.未治療の虫歯のある方
矯正治療中は虫歯が悪化するリスクが高まりますし、虫歯の歯には矯正装置からの矯正力を正しく伝えることができません。
未治療の虫歯がある方は、そのままでは出っ歯治療を受けることができません。
02.未治療の歯周病の方
歯周病も虫歯と同じく、矯正治療中に悪化する可能性があります。
歯周病が進んだ歯に矯正力を加えると、歯の動揺が増して歯が抜けてしまう恐れもあります。
歯周病の方は、まずは歯周病の治療を受けてから矯正治療に進むことになります。
03.継続的な通院が難しい方
矯正治療は長期にわたる治療です。
仕事で定期的な転勤があるなど、継続的な通院が難しい方も、出っ歯治療は受けていただきにくいです。
治療について
出っ歯治療について説明します。
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マルチブラケット矯正
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マルチブラケット矯正は、歯の表面にブラケットという金具をつけ、そこに通したワイヤーの働きで歯を動かしていく矯正治療法です。
100年ほどの歴史があり、矯正治療といえばこの方法が最もイメージされるほど、オーソドックスな矯正治療法です。
出っ歯の矯正治療にも適しています。
- 2
マルチブラケット矯正(舌側)
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マルチブラケット矯正の矯正装置を歯の裏側につける矯正治療法です。
裏側につけるので目立たなくなるのが利点ですが、通常のマルチブラケット矯正と比べると矯正装置の取り付けが難しいのが難点です。
- 3
インプラント矯正
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インプラント矯正は、歯科用アンカースクリューという小さなネジ状の矯正装置を顎の骨に入れて、そこから伸ばしたゴムの働きで歯並びを整える矯正治療法です。
アンカースクリュー単体では矯正治療はできないので、マルチブラケット矯正などと組み合わせて歯並びを整えていきます。
アンカースクリューそのものはとても小さなものなのですが、ここを支点に歯を動かすと、とても効率よく歯を移動できるので、矯正治療の効率が高まります。
インプラント矯正なら、通常の矯正治療では難しい奥歯の後ろへの移動できるので、出っ歯の歯を後ろに下げやすくなります。
- 4
マウスピース矯正
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マウスピース矯正は、マウスピースを矯正装置として使う矯正治療法です。インビザラインというアメリカで開発されたマウスピース矯正が有名です。
この方法では、まず歯並びや顎の骨格の状態をコンピューターに入力します。そして、矯正治療での歯の動きをシミュレーションします。
シミュレーションで得られた歯の移動に合わせて、マウスピースを自動的に作ります。マウスピースを一定の間隔で取り替えながら、出っ歯を治していきます。
リスク・副作用
出っ歯治療に伴うリスクや副作用を説明します。
歯の移動の痛み
出っ歯に限らず、歯を動かすとき、痛みを感じます。 多くの場合は数日で慣れてくる痛みですし、矯正治療が進むと歯を動かしても痛むことはなくなってくるので、ご安心ください。
抜歯の必要性
前に傾いたり、前に出た歯を後ろに下げなければ出っ歯は改善できません。
もし、後ろに下げるスペースが足りない場合は、第一小臼歯(前から4番目の歯)か第二小臼歯(前から5番目の歯)を抜歯してスペースを確保します。
抜歯すると歯の本数が減りますが、噛み合わせなどの機能的な問題は起こりませんし、前歯が後ろに移動するので隙間もなくなりますから、見た目も問題ありません。
虫歯や歯周病
マルチブラケット矯正のような複雑な矯正装置が歯に装着されると、歯磨きが難しくなります。
このため、虫歯や歯周病になるリスクが高まり、虫歯や歯周病になると矯正治療を一度中止して、虫歯治療や歯周病治療をしなければなりません。
治療の流れ
出っ歯矯正の治療の流れの一例を紹介します。
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- 1問診
- まず、最初に出っ歯を始めとして、歯並びの気になる点をお聞きします。
現在治療中の病気や過去にかかったことのある病気の有無、現在飲んでいる薬の有無、食べ物や薬のアレルギーの有無なども教えていただきます。
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- 2検査
- お顔や歯、口元、笑顔などの写真撮影、顎や歯のレントゲン写真撮影、歯の模型製作をします。
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- 3診断と治療方針の決定
- 検査結果を集め、歯並びや顎の状態などを分析します。
そして、歯並びの状態を診断します。
診断結果に基づいて、最適な治療法を検討し、治療方針と治療計画を立案します。
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- 4矯正装置の装着
- 治療計画に同意をいただければ、治療開始です。
矯正装置を歯に装着します。
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- 5抜歯
- 前に出た、あるいは前に傾いた前歯を後ろに下げるためのスペースが不足している場合は、前から数えて4番目の第一小臼歯やその後ろの第二小臼歯を抜歯してスペースを確保します。
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- 6矯正装置の調整
- 矯正装置をつけた後は、一定の間隔で歯科医院を受診し、ワイヤーの交換などの矯正装置の調整や治療の進捗状況の確認などを受けます。
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- 7矯正装置の撤去
- 矯正治療が終われば、口腔内に装着していた矯正装置を外します。
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- 8保定装置の装着
- 矯正治療で整えた歯並びは、治療を終えてからしばらくの間、元の状態に戻ろうとする後戻りを起こします。
後戻りを防ぐ処置を保定と言い、保定に使う矯正装置を保定装置といいます。
保定装置は、歯に接着する固定式と、取り外し可能な可撤式に分けられ、症状に合わせて選ばれます。
治療後の注意点
出っ歯治療を終えた後は次のようなことに気をつけてください。
経過観察を受ける
長くかかった矯正治療が終わった後、しばらくの間、一定の間隔で歯科医院で治療後の経過観察を受けてください。
歯並びの状態を確認し、後戻りを起こしていないかどうかを確認するためです。
保定装置を正しく使う
可撤式の保定装置の場合、矯正治療が終わったという安堵感から、使用を忘れてしまう方もいらっしゃいます。
保定装置を忘れず、正しく使いましょう。
歯磨き
虫歯や歯周病になるとせっかく整えた歯並びが台無しになってしまいます。
固定式の保定装置がついているところはもちろんですが、そうでないところもしっかり、そしてていねいに磨き、虫歯や歯周病にならないようにしましょう。
よくある質問
出っ歯矯正でしばしば受ける質問を紹介します。
出っ歯の部分だけ治せますか
出っ歯の歯並びを整えるためには、前に傾いた歯を後ろに下げなければなりません。
軽い出っ歯ならそこだけ部分矯正で治せるかもしれませんが、多くの場合は歯並び全体を整えないときれいにはなりません。
出っ歯の原因は何ですか?
出っ歯の原因はいろいろあるのですが、多いのは指しゃぶりや爪を噛む癖、舌を前に出す癖、口で呼吸する癖などです。
上顎、もしくは下顎の骨格に原因がある場合は、遺伝の影響も指摘されています。
笑ったら歯茎が見えるのですが、これも出っ歯ですか?
笑ったときに歯茎が見える状態をガミースマイルといいます。
ガミースマイルの原因もいろいろあるのですが、そのひとつが出っ歯です。
ガミースマイルの方は、出っ歯の可能性もあるので矯正歯科医院で診てもらうことをおすすめします。
費用
出っ歯矯正の治療費の相場についてご紹介します。
マルチブラケット矯正
マルチブラケット矯正で出っ歯を治した場合、矯正治療費の相場は50万〜120万円です。
マルチブラケット矯正(舌側)
歯の裏側に矯正装置をつけるマルチブラ矯正は難度が高いこともあり、相場はマルチブラケット矯正より高く、120万〜160万円です。
マウスピース矯正
マウスピース矯正で出っ歯を治すと、相場は50万〜100万円です。
医師からのコメント
出っ歯は、上顎前突症とも言われる歯列不正です。
前歯部の傾きだけで出っ歯になっている場合もあれば、顎の骨格の異常で出っ歯になっていることもあり、出っ歯の治療は複雑です。
当院は、出っ歯をはじめとして、さまざまな歯列不正の専門知識に加え、症例数の多い歯科医院んです。
出っ歯でお悩みの方は、当院にぜひお越しください。