下顎前突
(受け口・反対咬合)
下顎前突とは
下顎前突とは、下の歯や下顎骨が上の歯・上顎骨よりも前方に位置している状態で、一般的に「受け口」や「しゃくれ」と呼ばれます。
日本人に比較的多く見られる咬合異常で、審美的な問題だけでなく、咀嚼機能や発音にも大きな影響を与えます。
横顔の印象や口元のバランスが大きく変わるため、多くの方がコンプレックスを感じる歯並びの問題です。

このような方に向いています
下の歯が上の歯より前に出ている方
下顎が前に突出している方
横顔のしゃくれが気になる方
咀嚼がうまくできない方
発音に問題がある方
顔の輪郭を改善したい方

このような方には注意が必要です
重度の歯周病がある方
虫歯治療が完了していない方
定期的な通院が困難な方
金属アレルギーのある方(装置によって)
外科手術に強い不安がある方
全身疾患により手術が困難な方

治療の特徴
下顎前突矯正の特徴は次のとおりです。
横顔の劇的な改善
咀嚼機能の大幅な向上
発音の明瞭化
顔貌バランスの正常化
下顎前突の分類と原因
01.歯性下顎前突
下の前歯が前傾し、上の前歯が内傾している状態です。
骨格的な問題は軽微で、矯正治療のみで改善可能なことが多いです。
02.機能性下顎前突
咬む際に下顎を前方にずらして咬んでいる状態です。
早期治療により正常な咬合に誘導できる可能性があります。
03.骨格性下顎前突
下顎骨の過成長や上顎骨の劣成長が原因の状態です。
多くの場合で外科矯正治療の適応となります。
04.原因
・遺伝的要因(骨格的特徴)
・下顎骨の過成長
・上顎骨の劣成長
・機能的な下顎の前方偏位
・舌の悪習癖
・口呼吸
・アデノイド肥大の影響
治療方法の選択
矯正治療単独
軽度から中等度の歯性下顎前突に適応されます。
- 1
上顎歯列の前方拡大
-
上の前歯を前方に移動させ、咬合関係を改善します。
抜歯を避けられる場合があります。
- 2
下顎歯列の後方移動
-
下の前歯を後方に移動させる治療です。
親知らずの抜歯が必要になることがあります。
- 3
マルチブラケット装置
-
最も確実で予知性の高い治療法です。
複雑な歯の移動にも対応できます。
- 4
リンガルブラケット装置(裏側矯正)
-
歯の裏側に装置を装着する方法で、見た目を気にせず治療を受けられます。
下顎前突の治療にも有効です。
- 5
マウスピース型矯正装置
-
軽度の症例に適応があります。
段階的に歯を移動させていきます。
外科矯正治療
中等度から重度の骨格性下顎前突に適応されます。
- 1
下顎枝矢状分割術(SSRO)
-
最も一般的な下顎骨切り術です。
下顎骨を後退させ、理想的な咬合と横顔を獲得できます。
- 2
下顎枝垂直切断術(IVRO)
-
顎関節への影響を最小限に抑えた手術法です。
術後の安定性に優れています。
- 3
上下顎骨切り術
-
上顎の前方移動と下顎の後退を同時に行う手術です。
より大きな改善効果が期待できます。
- 4
オトガイ形成術
-
下顎先端部の形態を修正する手術です。
顔面の調和をより向上させることができます。
期待できる効果
審美的改善
下顎の突出感が改善され、美しい横顔を獲得できます。
顔面の調和とバランスが大幅に向上します。
機能的改善
正常な咬合により、前歯で噛み切る機能が回復します。
奥歯での咀嚼効率が向上します。
発音の改善
舌の位置が正常になることで、発音が明瞭になります。
特にサ行、タ行、ラ行の発音が改善されます。
口唇の機能改善
口唇の突出感が改善され、自然な表情ができるようになります。
口元の緊張が解消されます。
心理的効果
長年のコンプレックスが解消され、自信を持って人と接することができるようになります。
横顔に自信が持てるようになります。
治療時期の選択
01.成長期の治療(第一期治療)
機能性下顎前突の場合、早期治療により改善できることがあります。
上顎の成長促進と下顎の成長抑制を行います。
02.成人の治療(第二期治療)
骨格の成長が完了した後の治療です。
確実な治療結果が期待できます。
03.外科矯正治療の時期
下顎の成長が完了する18歳以降に行います。
男性では20歳以降が推奨されます。
治療におけるリスク・副作用
※歯を移動させる際、痛みや違和感が数日~1週間程度生じることがあります。
※下顎前突の治療は難易度が高く、治療期間が長期になることがあります。
※矯正装置装着により歯磨きが困難になります。
※清掃不良により虫歯や歯周病のリスクが高まります。
※歯の移動に伴い歯根吸収が起こることがあります。
※治療中・治療後に顎関節症状が現れることがあります。
※歯肉退縮が起こることがあります。
※外科手術には入院、全身麻酔、術後の腫れ、知覚異常などのリスクがあります。
※外科矯正治療では治療期間が3年以上になることがあります。
下顎前突矯正の相談事例集
受け口は必ず手術が必要ですか?
骨格的な問題の程度により異なります。軽度から中等度の受け口であれば、矯正治療のみで改善可能です。
受け口(下顎前突)には、(1)歯の傾斜だけで受け口に見える「歯性の下顎前突」と、(2)下顎の骨自体が大きい、または上顎の骨が小さい「骨格性の下顎前突」があります。歯性または軽度の骨格性下顎前突であれば、矯正治療のみで改善できることが多いです。
矯正治療では、下の前歯を内側に傾けたり、上の前歯を外側に傾けたりすることで、前歯の噛み合わせを改善します。また、奥歯の位置を調整することで、下顎の位置を後方に誘導することもできます。治療期間は2~3年程度です。
ただし、重度の骨格性下顎前突の場合は、矯正治療だけでは限界があり、外科矯正治療(顎矯正手術と矯正治療の組み合わせ)が必要になります。手術が必要かどうかは、セファログラム(矯正用レントゲン)で顎の骨格を分析して判断します。まずは精密検査を受けて、ご自身の症状がどのタイプかを確認することをおすすめします。
下顎前突の治療期間はどのくらいかかりますか?
矯正治療のみの場合は2~3年程度、外科矯正治療の場合は3~4年程度です。
矯正治療のみで改善できる軽度から中等度の下顎前突の場合、動的治療期間(歯を動かす期間)は2~3年程度です。その後、保定期間(後戻りを防ぐ期間)が2年以上必要になります。治療期間は、症状の程度、年齢、歯の移動に対する反応などによって個人差があります。
外科矯正治療が必要な重度の下顎前突の場合、全体の治療期間は3~4年程度です。治療の流れは、(1)術前矯正(手術前の歯の位置調整)で1~2年、(2)顎矯正手術と入院で1~2週間、(3)術後矯正(最終的な噛み合わせの調整)で6ヶ月~1年、(4)保定期間が2年以上、となります。
外科矯正治療の方が期間が長くなりますが、骨格から改善できるため、より劇的な変化が期待できます。具体的な治療期間については、精密検査を行った後に詳しくご説明します。治療計画を立てる際に、ライフイベント(就職、結婚など)に合わせたスケジュール調整も可能ですので、ご相談ください。
顎矯正手術は痛いですか?
全身麻酔下で行うため、手術中の痛みはありません。術後は痛み止めで適切に管理します。
顎矯正手術は全身麻酔下で行いますので、手術中は完全に眠っている状態で、痛みを感じることはありません。手術時間は2~4時間程度です。手術は口の中から行うため、顔に傷跡が残ることはありません。
術後は麻酔が切れてから痛みが出てきますが、痛み止めの点滴や内服薬で適切にコントロールします。術後2~3日が痛みのピークで、その後は徐々に軽減していきます。多くの方が「想像していたより痛みが少なかった」とおっしゃいます。
術後は顔が腫れますが、これは手術による正常な反応です。腫れは1週間程度でピークを迎え、その後徐々に引いていきます。完全に腫れが引くまでには1~2ヶ月程度かかります。入院期間は1~2週間程度で、その間は流動食から徐々に普通食へと食事形態を変えていきます。痛みや腫れについて不安がある場合は、術前に担当医に詳しく説明してもらうことをおすすめします。
大人になってからでも下顎前突の治療はできますか?
年齢に関係なく治療可能です。外科矯正治療は、顎の成長が完了する18歳以降に行います。
矯正治療は、歯と歯茎が健康であれば何歳からでも可能です。成人の方でも、下顎前突を改善してバランスの良い顔貌と正常な噛み合わせを獲得できます。実際、外科矯正治療を受ける方の多くは20~30代の成人です。
外科矯正治療(顎矯正手術を伴う治療)は、顎の骨の成長が完了してから行う必要があります。男性は18歳以降、女性は16~17歳以降が適応となります。成長期に手術を行うと、その後の成長で再び下顎が大きくなってしまう可能性があるためです。
成人の場合、子供に比べて骨の代謝が緩やかなため、歯の移動に時間がかかることがありますが、治療結果に大きな差はありません。また、成人は治療への協力が得られやすく、装置の管理もしっかりできるため、計画通りに治療が進むことが多いです。何歳からでも、コンプレックスを解消して自信のある笑顔を手に入れることは可能ですので、諦めずにご相談ください。
顎矯正手術のリスクはありますか?
下歯槽神経の知覚異常や顎関節への影響などのリスクがありますが、経験豊富な医師により安全に行われます。
顎矯正手術には、いくつかのリスクが伴います。最も一般的なのは、下歯槽神経(下顎の中を通る神経)の一時的な知覚異常です。術後、下唇やオトガイ(顎の先)の感覚が鈍くなることがありますが、多くの場合は数ヶ月~1年程度で回復します。ごく稀に、完全には回復しないこともあります。
その他のリスクとしては、(1)感染、(2)出血、(3)顎関節への影響、(4)骨の癒合不全、(5)顔面の非対称の残存、などがあります。ただし、これらの合併症は、経験豊富な口腔外科医が適切に手術を行えば、発生率は非常に低いです。
手術前には、担当医からリスクについて詳しい説明があります。リスクを理解した上で、同意書にサインをしていただきます。不安なことや疑問がある場合は、納得するまで質問することが大切です。リスクはゼロではありませんが、適切な病院で経験豊富な医師による手術を受ければ、成功率は非常に高く、安全性も確保されています。
見えない矯正で下顎前突は治療できますか?
軽度の症例では裏側矯正やマウスピース型矯正が可能ですが、重度の場合は通常の表側装置が適しています。
軽度から中等度の歯性下顎前突(歯の傾斜だけで受け口に見える状態)であれば、裏側矯正やマウスピース型矯正での治療が可能な場合があります。特に、裏側矯正は表側矯正と同等の治療効果が得られるため、見た目を気にされる方におすすめです。
ただし、重度の骨格性下顎前突で外科矯正治療が必要な場合は、通常の表側装置を使用することが多いです。外科矯正治療では、術前に歯を意図的に悪い位置に移動させる必要があり(デコンペンセーション)、精密な歯のコントロールが求められるためです。また、術後の噛み合わせの微調整も必要になります。
裏側矯正が可能かどうかは、症状の程度、治療方法、担当医の技術や経験によって異なります。外科矯正治療でも裏側矯正を行っているクリニックもありますので、見た目が気になる場合は、裏側矯正を得意とする矯正専門医に相談することをおすすめします。まずは精密検査を受けて、ご自身の症例で見えない矯正が可能かどうかを確認しましょう。
外科矯正治療で顔の形はどの程度変わりますか?
外科矯正治療により、顔貌は劇的に改善されます。特に横顔の印象が大きく変わります。
重度の下顎前突の方は、下顎が前方に突出しているため、横から見ると「しゃくれた」印象になります。外科矯正治療では、下顎の骨を後方に移動させたり、上顎の骨を前方に移動させたりすることで、顔のバランスを整えます。
手術により、(1)横顔のラインがすっきりする、(2)口元が引っ込む、(3)顔の下半分が短く見える、(4)Eライン(鼻の先とオトガイを結んだ線)が整う、などの変化が期待できます。正面から見た印象も改善され、より調和の取れた顔立ちになります。
ただし、手術で顔の形を変えることが目的ではなく、あくまで正常な噛み合わせを獲得することが第一の目的です。顔貌の改善は、その結果として得られるものです。術前には、セファログラムやCTのデータをもとに、手術後の顔貌をシミュレーションすることができます。どの程度変化するかを事前に確認できますので、安心して治療を受けていただけます。
外科矯正治療後に後戻りはありますか?
適切な保定により後戻りを防ぐことができます。外科矯正治療後の後戻りは、矯正治療のみの場合に比べて少ないです。
矯正治療で歯を動かした後は、歯は元の位置に戻ろうとする性質があります。これを「後戻り」と呼びます。矯正治療のみで改善した下顎前突の場合、保定を怠ると後戻りしやすい傾向があります。そのため、保定装置(リテーナー)の使用が非常に重要です。
一方、外科矯正治療では、骨格から改善しているため、矯正治療のみの場合に比べて後戻りが少ないです。手術で骨を移動させた後、骨同士はチタンプレートやスクリューで固定され、数ヶ月で癒合(くっつく)します。骨が癒合すれば、その位置は非常に安定します。
ただし、外科矯正治療後も保定装置の使用は必要です。歯自体は動く可能性があるためです。保定装置を指示通りに使用し、定期的なチェックを受けることで、治療結果を長期的に維持することができます。術後の保定期間は2年以上が推奨されており、最初の1~2年は1日中装着、その後は夜間のみの装着に移行するのが一般的です。
顎矯正手術の入院期間はどのくらいですか?
入院期間は1~2週間程度ですが、手術の内容により異なります。
顎矯正手術は全身麻酔下で行う手術のため、入院が必要です。入院期間は、手術の内容、患者さんの回復状況、病院の方針などによって異なりますが、一般的には1~2週間程度です。上顎と下顎の両方を手術する場合は、入院期間が長くなることがあります。
入院中のスケジュールは、手術翌日から歩行を開始し、徐々に活動範囲を広げていきます。食事は、最初は流動食から始め、徐々に軟食、常食へと段階的に進めていきます。術後2~3日で点滴が外れ、1週間程度で抜糸を行います。
退院後は、自宅で安静にしながら徐々に日常生活に戻っていきます。仕事や学校への復帰は、デスクワークであれば2~3週間後、体を使う仕事であれば1~2ヶ月後が目安です。入院期間中は面会も可能ですので、ご家族のサポートを受けながら回復を待ちましょう。具体的な入院期間やスケジュールについては、手術を行う病院から事前に詳しい説明があります。
下顎前突は遺伝しますか?
下顎前突には遺伝的要因が強く関与します。ご家族に同様の症状がある場合は注意が必要です。
下顎前突、特に骨格性下顎前突は、遺伝的要因が大きく影響します。顎の骨格の大きさや形は遺伝的に決まる部分が大きく、ご両親やご祖父母に受け口の方がいると、お子さんも受け口になる可能性が高くなります。特に、下顎が大きい家系、上顎が小さい家系などの特徴は遺伝しやすいです。
ただし、遺伝が100%ではありません。環境的要因も影響します。例えば、(1)口呼吸、(2)舌の位置の異常、(3)指しゃぶり、(4)頬杖をつく癖、などの後天的な要因も、下顎前突の原因になることがあります。
ご家族に受け口の方がいる場合、お子さんの歯並びや顎の成長に注意を払い、早めに矯正専門医に相談することをおすすめします。機能性下顎前突(上下の前歯の噛み合わせの問題で受け口になっている状態)であれば、4歳頃からの早期治療が有効です。早期に治療を開始することで、骨格性下顎前突への進行を防げる可能性があります。定期的なチェックを受けることが大切です。
子供の受け口はいつ治療すべきですか?
機能性下顎前突の場合は早期治療が有効です。4~5歳頃からの治療開始が推奨されます。
子供の受け口には、(1)機能性下顎前突(上下の前歯の噛み合わせの問題)と、(2)骨格性下顎前突(顎の骨自体の大きさの問題)があります。機能性下顎前突の場合、上の前歯が下の前歯より内側にあるため、下顎を前に出さないと噛めない状態になっています。このような場合、早期治療が非常に効果的です。
4~5歳頃から、ムーシールドやプレオルソなどの取り外し式の装置を使用することで、上下の前歯の噛み合わせを改善できます。夜間を中心に装置を使用し、正しい噛み合わせに誘導します。早期に治療することで、骨格性下顎前突への進行を防ぎ、将来的に手術が必要になるリスクを減らすことができます。
骨格性下顎前突の場合でも、成長期を利用した治療が可能です。上顎の成長を促進する装置(上顎前方牽引装置)や、下顎の過成長を抑制する装置(チンキャップ)などを使用します。ただし、重度の骨格性下顎前突の場合は、成長が完了してから外科矯正治療が必要になることもあります。お子さんの受け口が気になる場合は、早めに矯正専門医に相談することをおすすめします。
下顎前突の治療で発音は改善されますか?
正常な噛み合わせを獲得することで、発音機能は大幅に改善されます。
下顎前突の方は、上下の前歯が反対に噛んでいるため、サ行やタ行などの発音がしにくいことがあります。これは、舌の位置や空気の流れが正常と異なるためです。また、受け口により口元が突出していると、唇の動きにも影響が出ることがあります。
矯正治療や外科矯正治療により、上下の前歯が正しく噛み合うようになると、舌の位置が正常になり、空気の流れも改善されます。その結果、発音が明瞭になり、話しやすくなります。特に、サ行、タ行、ナ行などの発音が大幅に改善されることが多いです。
ただし、治療中は一時的に発音がしにくくなることがあります。特に、装置を装着した直後や、外科矯正治療の術後は、装置や腫れの影響で発音しにくい時期があります。しかし、これは一時的なもので、装置に慣れたり、腫れが引いたりすることで改善します。最終的には、治療前よりも明瞭な発音が可能になりますので、安心して治療を受けてください。
外科矯正治療中、術前矯正で見た目が悪化するのが心配です。
術前矯正中は一時的に噛み合わせや見た目が悪化することがありますが、最終的には大幅に改善されます。
外科矯正治療では、手術前に「術前矯正」を行います。これは、手術で顎の骨を動かした後に、上下の歯がぴったり噛み合うように、事前に歯の位置を調整する処置です。下顎前突の場合、下の前歯をさらに前方に傾けたり、上の前歯を内側に傾けたりすることがあります。
そのため、術前矯正中は一時的に受け口が強調されたように見えたり、前歯で噛めなくなったりすることがあります。見た目が悪化したように感じて不安になる方もいますが、これは治療計画の一部であり、手術で顎の骨を移動させた後には、すべてが正常な位置に収まります。
術前矯正期間は1~2年程度です。この期間、見た目が気になる場合は、マスクをしたり、裏側矯正を選択したりすることで、ある程度カバーできます。担当医から、術前矯正の必要性と、一時的に見た目が変化することについて、事前に詳しい説明があります。最終的には劇的に改善されますので、一時的な変化を理解し、治療のゴールを目指して頑張りましょう。
外科矯正治療の成功率はどのくらいですか?
経験豊富な口腔外科医による手術であれば、成功率は非常に高いです。
顎矯正手術は、口腔外科の中でも専門性の高い手術です。大学病院や総合病院の口腔外科で、経験豊富な医師が行う手術であれば、成功率は95%以上と非常に高いです。手術の技術は年々進歩しており、安全性も向上しています。
手術の成功とは、(1)計画通りに顎の骨を移動できること、(2)重大な合併症が起きないこと、(3)正常な噛み合わせが獲得できること、(4)顔貌が改善されること、を意味します。適切な病院で、経験豊富な医師による手術を受ければ、これらはほぼ確実に達成されます。
ただし、手術には必ずリスクが伴います。神経の知覚異常、感染、出血などの合併症が起こる可能性はゼロではありません。しかし、適切な術前検査、丁寧な手術手技、術後の適切な管理により、これらのリスクは最小限に抑えられます。
手術を受ける病院を選ぶ際は、口腔外科の専門医がいること、顎矯正手術の実績が豊富であることを確認することが大切です。担当医に実績や成功率について質問し、納得した上で手術を受けることをおすすめします。
外科矯正治療に保険は適用されますか?
外科矯正治療は健康保険の適用となります。指定医療機関での治療が必要です。
顎変形症と診断され、外科矯正治療(顎矯正手術と矯正治療の組み合わせ)が必要な場合、健康保険が適用されます。これは、顎変形症が「著しい咬合異常を伴う顎の骨格的な変形」として、保険診療の対象と認められているためです。
保険適用で外科矯正治療を受けるには、(1)顎口腔機能診断施設の指定を受けた矯正歯科医院、(2)顎矯正手術の施設基準を満たした病院の口腔外科、の両方で治療を受ける必要があります。矯正歯科で術前矯正と術後矯正を行い、提携している病院の口腔外科で手術を受ける流れになります。
保険適用の場合、矯正治療と手術を合わせても、自費診療に比べて大幅に負担が軽減されます。ただし、保険適用の矯正治療では、使用できる装置が限定されることがあります(裏側矯正やマウスピース型矯正は保険適用外)。
顎変形症かどうかの診断には、精密検査が必要です。まずは指定医療機関である矯正歯科医院を受診し、保険適用の対象かどうかを確認することをおすすめします。医療費控除も利用できますので、領収書は必ず保管しておいてください。
医師からのコメント
下顎前突は日本人に比較的多く見られる咬合異常で、審美的・機能的な問題を引き起こします。
特に重度の骨格性下顎前突では、外科矯正治療により劇的な改善が期待できます。
近年の外科技術の向上により、安全で確実な治療が可能になっています。
早期に発見された機能性下顎前突では、成長期の治療により外科手術を回避できる場合もあります。
治療により獲得される正常な咬合と美しい顔貌は、患者さまの人生を大きく変える力があります。
受け口でお悩みの方、お子さまの咬み合わせが気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
最適な治療時期と方法をご提案いたします。
