最終更新日:2025.7.1(公開日:2025.7.1)
監修者:日本矯正歯科学会認定医 院長 宮島 桜

受け口やしゃくれでお悩みではありませんか?下あごが前に出ている状態は、見た目のコンプレックスだけでなく、噛み合わせや発音にも影響を与える可能性があります。しかし、現代の矯正治療技術により、多くの受け口の症状は改善可能です。
この記事では、受け口の原因から最新の矯正治療法、費用や期間まで、専門医の視点から詳しく解説します。治療への不安を抱えている方も、この記事を読めば矯正治療への第一歩を踏み出す勇気が湧くでしょう。あなたの笑顔に自信を取り戻すための情報をお届けします。
受け口(しゃくれ)とは?基本的な知識を理解しよう
受け口とは、下あごが上あごよりも前に出ている状態を指します。医学的には「下顎前突」と呼ばれ、正常な噛み合わせとは逆の状態になっています。一般的に「しゃくれ」とも呼ばれるこの症状は、単なる見た目の問題だけでなく、機能的な問題も引き起こす可能性があります。
正常な噛み合わせでは、上の前歯が下の前歯を2-3mm程度覆うのが理想的です。しかし、受け口の場合は下の前歯が上の前歯よりも前に位置し、時には全く噛み合わない状態になることもあります。
受け口の主な特徴:
- ・下あごが突出して見える
- ・横から見たときの顔のラインが特徴的
- ・前歯で物を噛み切りにくい
- ・発音に影響が出る場合がある
- ・口が閉じにくいことがある
受け口は程度によって軽度から重度まで分類され、それぞれに適した治療法があります。早期の診断と適切な治療により、多くの場合で改善が期待できます。
受け口になる原因は何?遺伝と環境要因
受け口の原因は複雑で、遺伝的要因と環境的要因が組み合わさって発症すると考えられています。原因を理解することで、予防や早期治療につなげることができます。
遺伝的要因
受け口には明らかな遺伝的傾向があります。両親や祖父母に受け口の方がいる場合、子どもにも同様の症状が現れる可能性が高くなります。特に、骨格性の受け口は遺伝の影響が強いとされています。
環境的要因
生活習慣や成長過程での影響も受け口の原因となります:
幼児期の習慣
- ・長期間の指しゃぶり
- ・舌を前に突き出す癖
- ・口呼吸の習慣
- ・うつ伏せ寝による下あごへの圧迫
成長期の影響
- ・上あごの成長不足
- ・下あごの過成長
- ・歯の生え方の異常
- ・顎関節の問題
病気や外傷による影響
まれに、病気や外傷が原因で受け口になることもあります。成長ホルモンの異常や、あごの骨折などが挙げられます。
原因の特定は専門医による詳しい検査が必要です。レントゲン撮影や歯型の採取、顔面写真の分析などを通じて、個々の患者さんに最適な治療計画を立てることができます。
受け口矯正の必要性と放置するリスク
「見た目だけの問題だから」と受け口矯正を先延ばしにしている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、受け口を放置することで様々な問題が生じる可能性があります。
機能的な問題
咀嚼機能の低下
前歯で物を噛み切ることが困難になり、食事に支障をきたすことがあります。十分に噛まずに飲み込むことで、消化器官への負担も増加します。
発音への影響
特にサ行、タ行の発音が不明瞭になることがあります。これにより、コミュニケーションに支障をきたし、社会生活に影響を与える場合があります。
顎関節症のリスク
不適切な噛み合わせにより、顎関節に負担がかかり、顎関節症を発症するリスクが高まります。
心理的・社会的影響
見た目のコンプレックスから、人前で笑うことを避けたり、写真撮影を嫌がったりすることがあります。これらは自信の低下や社交性への影響につながる可能性があります。
口腔衛生への影響
歯並びが悪いことで歯磨きが困難になり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。長期的には歯を失う原因にもなりかねません。
早期治療のメリット
成長期での治療
子どもの成長期に治療を行うことで、あごの成長をコントロールし、より効果的な改善が期待できます。
治療期間の短縮
早期治療により、将来的により複雑な治療を避けることができ、結果として治療期間と費用を抑えることが可能です。
予防効果
早期の介入により、症状の悪化を防ぎ、将来的な外科手術の必要性を回避できる場合があります。
受け口矯正の治療方法は?年齢別アプローチ
受け口矯正の治療方法は、患者さんの年齢、症状の程度、原因などによって大きく異なります。適切な治療時期と方法を選択することが、成功への鍵となります。
小児期の治療(3歳~12歳頃)
機能的矯正装置
取り外し可能な装置を使用し、あごの成長をコントロールします。夜間装着するタイプが多く、日常生活への影響を最小限に抑えられます。
習癖改善
舌癖や口呼吸などの悪習癖の改善を行います。専門的な口腔筋機能療法(MFT)により、正しい口腔機能を身につけます。
チンキャップ
下あごの成長を抑制するための装置です。主に就寝時に使用し、下あごの前方成長をコントロールします。
思春期の治療(12歳~18歳頃)
ブラケット矯正
歯に装置を装着し、歯の移動を行います。現在では目立たない白いブラケットやリンガル矯正(裏側矯正)も選択できます。
機能的矯正装置との併用
歯列矯正と同時に、あごの成長コントロールも行います。この時期は成長の最終段階のため、タイミングが重要です。
成人の治療(18歳以降)
歯列矯正
主に歯の移動による改善を行います。マウスピース型矯正装置(インビザラインなど)も選択肢の一つです。
外科的矯正治療
重度の骨格性受け口の場合、外科手術と矯正治療を組み合わせた治療が必要になることがあります。
部分矯正
軽度の症状や前歯部のみの改善を希望する場合は、部分的な矯正治療も可能です。
最新の治療技術
デジタル矯正
3Dスキャナーやコンピューターシミュレーションを活用し、より精密な治療計画を立てることができます。
加速矯正
特殊な装置や技術により、従来よりも短期間での治療を実現する方法も開発されています。
治療方法の選択は、専門医による詳しい診査・診断に基づいて決定されます。患者さんのライフスタイルや希望も考慮した、オーダーメイドの治療計画が重要です。
受け口矯正にかかる費用と期間の目安
受け口矯正を検討する際、多くの方が気になるのが費用と治療期間です。症状の程度や治療方法により大きく異なりますが、一般的な目安をご紹介します。
治療費用の目安
小児矯正(第1期治療)
- ・機能的矯正装置:30万円~50万円
- ・習癖改善指導:5万円~15万円
- ・定期管理費:月額3,000円~5,000円
成人矯正(第2期治療)
- ・表側ブラケット矯正:60万円~100万円
- ・裏側矯正(リンガル):100万円~150万円
- ・マウスピース矯正:70万円~120万円
- ・部分矯正:20万円~50万円
外科的矯正治療
- ・術前矯正+手術+術後矯正:保険適用で総額30万円~50万円
- ・自費診療の場合:150万円~300万円
その他の費用
- ・初診相談:無料~5,000円
- ・精密検査:3万円~5万円
- ・調整料:月額3,000円~8,000円
- ・保定装置:3万円~10万円
治療期間の目安
小児期の治療
- ・機能的矯正:1年~3年
- ・経過観察期間:数年間
- ・必要に応じて第2期治療:1年~3年
成人矯正
- ・軽度の受け口:1年~2年
- ・中等度の受け口:2年~3年
- ・重度の受け口:3年~4年
- ・外科的矯正治療:術前矯正1年+手術+術後矯正1年
保定期間
- ・動的治療終了後:2年~3年(場合によっては終生)
費用を抑える方法
医療費控除の活用
矯正治療費は医療費控除の対象となる場合があります。年間の医療費が10万円を超えた場合、確定申告により税金の還付を受けられます。
分割払いの利用
多くの矯正歯科クリニックでは、分割払いやデンタルローンに対応しています。月々の負担を軽減しながら治療を受けることができます。
早期治療のメリット
小児期からの治療により、将来的な外科手術を回避できれば、結果として総治療費を抑えることができます。
保険適用について
一般的な矯正治療は自費診療ですが、以下の場合は保険適用となります:
- ・厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常
- ・前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全
- ・顎変形症(外科的矯正治療の適応症例)
費用や期間は個人差が大きいため、まずは専門医による相談を受けることをお勧めします。複数のクリニックで相談し、治療方針や費用を比較検討することも大切です。
矯正治療中の注意点と日常生活への影響
受け口矯正治療を成功させるためには、治療中の適切なケアと生活習慣の管理が重要です。治療開始前に知っておくべき注意点をご紹介します。
装置装着初期の対応
痛みや違和感
装置装着後数日間は、歯や歯茎に痛みや違和感を感じることがあります。これは正常な反応であり、通常1週間程度で慣れてきます。
発音への影響
特に裏側矯正や機能的矯正装置では、一時的に発音がしにくくなることがあります。練習により徐々に改善されます。
食事の注意
硬い食べ物や粘着性の食べ物は装置の破損や脱離の原因となるため、避ける必要があります。
口腔衛生管理
歯磨きの重要性
矯正装置周辺は汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。専用の歯ブラシやフロスを使用し、丁寧なケアが必要です。
定期的なクリーニング
矯正治療中は通常よりも頻繁に歯科医院でのクリーニングを受けることをお勧めします。
フッ素の活用
虫歯予防のため、フッ素入り歯磨き粉の使用や定期的なフッ素塗布が効果的です。
食事制限と工夫
避けるべき食べ物
- 硬いもの:氷、せんべい、ナッツ類
- 粘着性のもの:キャラメル、ガム、餅
- 繊維質のもの:とうもろこし、りんご(丸かじり)
食事の工夫
- ・食べ物を小さく切る
- ・前歯で噛まず、奥歯を使用
- ・ゆっくりと丁寧に咀嚼
定期的な通院の重要性
調整の必要性
矯正装置は定期的な調整が必要です。予約日を守り、継続的な治療を行うことが成功の鍵です。
経過観察
治療の進行状況を確認し、必要に応じて治療計画の修正を行います。
トラブル時の対応
装置の破損や脱離、強い痛みなどがあった場合は、すぐに担当医に連絡しましょう。
心理的サポート
見た目への配慮
装置が目立つことによる心理的ストレスを感じる場合は、カウンセリングやサポートを受けることが大切です。
モチベーションの維持
治療期間が長期にわたるため、定期的に治療の進歩を確認し、モチベーションを維持することが重要です。
緊急時の対応
装置の破損
ワイヤーの突出や装置の脱離があった場合は、応急処置を行い、すぐに歯科医院に連絡しましょう。
強い痛み
通常の痛み止めで対応できない強い痛みがある場合は、担当医に相談してください。
治療中の協力と適切なケアにより、より良い治療結果を得ることができます。不安や疑問があれば、遠慮なく担当医に相談しましょう。
受け口矯正の成功事例と患者さんの声
実際の治療成功事例をご紹介することで、受け口矯正への理解を深めていただき、治療への不安を軽減していただければと思います。
症例1:小学生の機能的矯正治療
項目 | 内容 |
---|---|
患者情報 | 8歳男児、軽度の受け口 |
治療内容 | 機能的矯正装置による治療 |
治療期間 | 2年間 |
結果 | 下あごの成長コントロールにより、正常な噛み合わせを獲得 |
患者さんの声 | 最初は装置を嫌がっていた息子でしたが、先生の丁寧な説明と励ましにより、しっかりと装着を続けることができました。今では自然な笑顔を見せてくれるようになり、治療を始めて本当に良かったと思います。(母親談) |
症例2:成人女性のマウスピース矯正
項目 | 内容 |
---|---|
患者情報 | 25歳女性、中等度の受け口 |
治療内容 | マウスピース型矯正装置による治療 |
治療期間 | 3年間 |
結果 | 歯列の改善により、受け口が大幅に改善 |
患者さんの声 | 接客業をしているため、目立たない矯正装置を希望しました。マウスピース矯正なら人に気づかれることなく治療できました。食事の時は外せるので、生活への影響も最小限でした。治療後は自信を持って笑えるようになり、仕事でもプライベートでも積極的になれました。 |
症例3:外科的矯正治療
項目 | 内容 |
---|---|
患者情報 | 22歳男性、重度の骨格性受け口 |
治療内容 | 術前矯正 + 外科手術 + 術後矯正 |
治療期間 | 総期間3年(術前矯正1年、術後矯正2年) |
結果 | 劇的な顔貌の改善と機能回復 |
患者さんの声 | 手術への不安は大きかったですが、詳しい説明と手厚いサポートにより、安心して治療に臨むことができました。術後の変化は想像以上で、家族や友人からも「表情が明るくなった」と言われます。就職活動でも自信を持って面接に臨むことができました。 |
治療成功のポイント
早期の診断と治療開始
多くの成功例では、適切な時期に治療を開始していることが共通しています。
患者さんの協力
装置の適切な使用や口腔衛生管理など、患者さんの積極的な協力が良好な結果につながっています。
専門医との信頼関係
治療期間中の不安や疑問に対して、専門医が適切にサポートすることで、治療を継続できています。
家族のサポート
特に小児の場合、家族の理解と協力が治療成功の重要な要因となっています。
治療後の変化
機能面の改善
- ・咀嚼機能の向上
- ・発音の明瞭化
- ・顎関節症状の軽減
審美面の改善
- ・顔貌の調和
- ・自然な笑顔
- ・横顔のラインの改善
心理面の変化
- ・自信の向上
- ・社交性の改善
- ・生活の質(QOL)の向上
これらの成功事例は、適切な診断と治療計画、そして患者さんの協力により実現されたものです。あなたも専門医と二人三脚で治療に取り組むことで、理想的な結果を得ることができるでしょう。
まとめ:受け口矯正で理想の笑顔を実現しよう
受け口やしゃくれでお悩みの方にとって、矯正治療は単に見た目を改善するだけでなく、機能面や心理面においても大きなメリットをもたらします。この記事でご紹介した情報を踏まえ、受け口矯正について改めて整理してみましょう。
受け口矯正の重要なポイント
早期治療の優位性
小児期からの治療により、あごの成長をコントロールし、より効果的で負担の少ない治療が可能です。成人になってからでも改善は十分可能ですが、治療の選択肢や期間に違いが生じます。
多様な治療法
現在の矯正治療技術は大きく進歩しており、年齢や症状、ライフスタイルに応じた様々な治療選択肢があります。目立たない装置や短期間での治療も可能になっています。
総合的な健康への影響
受け口の改善は、咀嚼機能、発音、顎関節の健康など、口腔機能全般の向上につながります。また、見た目のコンプレックス解消により、心理的な健康にも大きく寄与します。
治療を検討する際のアドバイス
専門医による詳しい診査を受ける
受け口の程度や原因は個人により大きく異なります。まずは矯正歯科専門医による詳しい診査を受け、あなたに最適な治療計画を検討しましょう。
複数の意見を聞く
治療方法や費用については、複数の専門医の意見を聞くことをお勧めします。セカンドオピニオンにより、より納得のいく治療選択ができます。
治療への理解と協力
矯正治療は長期間にわたる治療です。治療内容を十分に理解し、積極的に協力することが成功への鍵となります。
次のステップ
もし受け口でお悩みでしたら、以下のアクションを検討してみてください:
1.初診相談の予約
まずは専門医による相談を受けてみましょう
2.情報収集
治療法や費用について詳しく調べてみましょう
3.家族との相談
特にお子様の治療の場合は、家族全体で検討しましょう
4.ライフプランの検討
治療期間や費用を含め、総合的に判断しましょう
受け口矯正は、あなたの人生をより豊かにする投資といえます。美しい笑顔と健康的な口腔機能を手に入れることで、自信に満ちた毎日を送ることができるでしょう。
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