不正咬合 | 新宿の矯正歯科

不正咬合(悪い歯並び)の種類

最終更新日2024.8.23(公開日:2023.04.01)
監修者:日本矯正歯科学会認定医 院長 宮島 桜

「不正咬合(ふせいこうごう)」という言葉を知っていますか?そのまま読むと、「正しくない咬合」となりますが、噛み合わせや歯並びが悪い状態を意味しています。一言で不正咬合と言っても、実際にはいろいろな種類があり、原因も症状もそれぞれ異なります。

不正咬合の状態によっては日常生活に支障をきたすこともあります。
現代の矯正歯科では、いろいろな不正咬合を改善し、歯並びをきれいにしたいというニーズに応えるため、症状に合わせたさまざな治療法が開発されています。代表的な不正咬合をご紹介します。

八重歯・乱杭歯・凸凹

歯の生える土台となる骨が狭く、歯を並べるスペースが足りないことで起こる不正咬合です。
専門用語では叢生とよび、歯の並びが重なったり、デコボコになったりした状態です。中でも上顎の犬歯が歯並びからはみ出した八重歯は、ご存じの方も多いと思います。

八重歯は、日本ではかわいらしいというイメージがあるようですが、ヨーロッパやアメリカではドラキュラの歯、中国では虎の歯と呼ばれ、あまり良い印象は抱かれていません。八重歯に代表される叢生には見た目が悪いという外見上の問題もあります。

それだけでなく、歯が重なっている部分がなかなか歯磨きしにくいため、虫歯や歯周病になりやすいという歯の健康上の問題点もあります。
治療法は、第一小臼歯という前から4番目の歯を抜歯して歯を並べるスペースを作り、残りの歯をきれいに並べるという方法が選ばれることが多いです。

出っ歯

出っ歯とは、上顎の前歯が下顎の前歯より前に異常に飛び出している状態です。
出っ歯は、上顎が前に出ている「上顎前突症(じょうがくぜんとつしょう)」と、下顎が後ろに下がっている「下顎後退症」に分けられます。
出っ歯になる原因は、いろいろです。

顎の骨格の位置や形などに異常があり上顎骨が前に出過ぎている出っ歯もありますし、指しゃぶりなどの癖があり上顎の前歯が前向きに傾いてしまった出っ歯もあります。出っ歯は、見た目の悪さは発音の難しさから社交性に影響を及ぼしたり、食べにくかったりと社会生活に影響が出ます。

また、プラークがたまりやすいので、虫歯や歯周病にもなりやすく、歯の健康という点でも問題があります。
軽度な出っ歯なら、上顎の前歯を後ろに移動させて改善できますが、それで対応できない場合は、第一小臼歯を抜歯して前歯を後ろに下げて歯並びを整えます。骨格に問題がある場合は、顎の骨格の位置や形、大きさを整えなければなりません。

受け口

受け口とは、下顎の前歯が上顎の前歯よりも前に出ている状態です。
正しい噛み合わせでは上顎の前歯の方が前に出るので、噛み合わせが反対になっているということから、反対咬合という言い方もされます。
全部の歯が反対に噛み合わせていることは意外と少ないです。

前歯の噛み合わせだけが受け口になっていることが多いですが、前歯の噛み合わせは正常に見えて、奥歯だけ受け口になっていることもあります。受け口は、下顎が前に出ている「下顎前突症(かがくぜんとつしょう)」や、上顎が後ろに下がっている「上顎後退症」に分けられます。 受け口の原因も、いろいろです。

顎の骨格に位置や形の異常があり下顎骨が上顎骨より前に出ている受け口もあれば、舌を前に出す舌癖などの癖により下顎の前歯が前向きに傾いてしまった受け口もあります。成長期の子供の受け口では、歯の傾きで起こったものであっても放置していれば、骨格の歪みを引き起こすことがあるので、子供の受け口は注意が必要です。

軽度な受け口なら上顎の前歯を前に移動させて噛み合わせを改善できますが、前歯の移動で対応できない場合は、第一小臼歯を抜歯して下顎の前歯を後ろに移動させます。下顎骨の位置や形、大きさに問題があるのなら、下顎骨の骨切り手術により顎の位置や形、大きさを整えます。

上下顎前突症

上下顎前突症は、上顎、下顎ともに前に出過ぎた状態です。上顎の出っ歯と下顎の受け口が同時に起こった状態なので、お口が閉じにくく、無理に閉じればお顔に対して口元が過剰に突出した感じになります。

上顎と下顎の骨格に異常があり、両方が前方に成長し過ぎている上下顎前突症もあれば、前歯の向きが上下ともに前向きに傾きすぎていて上下顎前突症になっている場合もあります。上下顎前突症の治療は、軽症なら前歯の傾きを整えるだけですみますが、傾きの補正だけでは難しい場合は、小臼歯を抜歯して前歯を後ろに動かします。

開咬

開咬(かいこう)とは、噛み合わせたときに触れ合うべき上顎と下顎の複数の歯が噛み合わせられない状態です。
上下の奥歯を噛んでいても、上下の前歯が噛み合わせられない前歯部開咬がわかりやすいですが、奥歯が噛み合わせられない臼歯部開咬もあります。
なお、複数の歯が噛み合わせられない状態が開咬なので、1歯だけ噛み合わせられない状態は開咬には含まれません。

口呼吸や舌を出すクセが原因と言われていますが、幼少期からの指しゃぶりが大きな原因のひとつです。
指しゃぶりを放置しておき、成長期までに適切な対処をしないと簡単な矯正では治らなくなってしまうので指しゃぶりを楽観視するのは危険です。

開咬のままでは、食べ物を前歯で噛み切ることができない、発音が悪くなる、口呼吸になり全身の健康にも影響が出るなど、生活する上でもさまざまな問題が生じます。開咬の治療は、前歯の位置を高くし、反対に奥歯の噛み合わせを低くします。

過蓋咬合

過蓋咬合とは、上顎の前歯と下顎の前歯の噛み合わせが異常に深い状態です。噛み合わせが深いということから、英語ではディープ(深い)バイト(噛み合わせ)とよばれます。過蓋咬合の方は、上顎の前歯で下顎の前歯が隠れて見えなくなるだけでなく、中には下顎の前歯が上顎の前歯の内側の歯肉に当たっている場合もあります。

噛み合わせが上下反対で、受け口の過蓋咬合もあります。噛み合わせが異常に深くなると、下顎の動きに制限がかかってしまいます。
このため、上下の歯を噛み合わせるために、顎関節の動きに正常な人以上の負荷がかかるようになり、顎関節症になりやすい傾向があります。

また、深く噛み込むようになるため、歯に加わる負担も大きく、歯が欠けたり、被せ物や詰め物が外れたりしやすくなります。
過蓋咬合の治療では、噛み合わせの高さを調整します。具体的には、奥歯の噛み合わせの高さをあげて、前歯を低くします。

切端咬合

切端とは前歯の先端部分のことで、切端咬合とは、奥歯で噛み合わせたときに上顎の前歯と下顎の前歯がお互いの先端部分で触れ合う状態のことです。正しい噛み合わせでは、上顎の前歯が下顎の前歯より2〜3ミリほど前に位置し、上下関係も2〜3ミリほど重なった噛み合わせになっています。

切端咬合では先端同士が重ならずに触れ合っているので、切端咬合が不正咬合であることがお分かりいただけると思います。
切端咬合の原因は、舌の癖や顎の骨格の大きさや形の異常などと言われています。

切端咬合のままでいても問題なさそうに思われがちですが、噛み合わせたときに前歯の薄い先端部分に大きな負担がかかるので、先端が欠けたりすり減ったりすることがあります。切端咬合は、歯を動かして歯の角度や位置を調整すれば治ることが多いですが、骨格に問題があるケースでは、顎の骨格を整える顎矯正手術が必要となります。

交叉咬合

通常、上顎と下顎の歯の位置関係は、上顎の歯の方が下顎の歯よりも外側に位置しています。交叉咬合は、歯並びの一部分だけ、上顎の歯が内側に入り込んでいる状態を言います。歯並びがクロスしているので、このようによばれています。1箇所だけクロスしていることもあれば、何箇所もクロスしている場合もあります。特に問題になるのは、成長期の交叉咬合です。

成長期に交叉咬合になっていると、顎の骨格の成長発育に影響が出て、顎がずれた状態で成長してしまい、口元だけでなくお顔全体の歪みの原因になることがあるからです。問題になるのはお子さんだけではありません。

大人の方の交叉咬合では、不自然な噛み合わせに伴う顎の動きにより、肩こりや頭痛の原因になる方もいらっしゃいます。
交叉咬合の治療は、歯並びを広げることです。歯並びを広げることで、噛み合わせが反対になっているところを正しい噛み合わせに戻します。

空隙歯列

空隙歯列は、たくさんの歯と歯の間に隙間がある状態です。1箇所だけ隙間がある状態では、空隙歯列に含まれません。空隙歯列は、歯の大きさと顎の大きさのバランスが悪く、歯の方が顎の骨より小さすぎるときや、舌が歯並びを内側から押しすぎる場合に起こります。八重歯や乱杭歯の反対の不正咬合といえます。

空隙歯列では、声を出すときに空気が歯と歯の間から漏れ出しやすく、はっきり話すことが難しくなることがあります。
また、歯と歯の間に食べ物が残り、虫歯や歯周病、口臭の原因になりやすいです。なお、乳歯の歯並びに隙間がたくさん見られることがあります。

乳歯の歯並びでは、歯と歯の間に隙間がある方が永久歯がきれいに並びやすくなるので、不正咬合とは診断されません。
空隙歯列の治療は、歯を少しずつ動かして、歯と歯の間をなくしていきます。

正中離開

正中離開は、左側と右側の中切歯とよばれる真ん中の歯が接触せず、歯と歯の間に隙間がある状態です。
一般的に、正中離開というと上顎の前歯部の中切歯間の隙間を指します。
上顎の中切歯は、生えた当初はお互い反対むきに傾いているものなのですが、隣の側切歯が生えてくるにつれて真ん中に寄ってきて、隙間がなくなります。

ところが、中切歯の歯根のあたりに過剰歯という余分な歯があったり、上唇小帯という上唇から歯肉にかけて伸びている筋が太く長かったりすると、中切歯が寄れなくなります。側切歯が小さすぎても、中切歯を真ん中に寄せられないので正中離開になることがあります。
こうして正中離開が起こると考えられています。

正中離開の状態では、前歯の間に食べ物が挟まりやすく、前歯の虫歯や歯周病の原因になります。また、前歯の隙間は目立つので、見た目の問題も大きいです。正中離開の治療は、前歯を真ん中に向かって移動させて隙間を解消させます。

その他の不正咬合

他にも、奥歯の咬み合わせがずれ、歯の噛み合わせが左右対称にならない「偏位咬合(へんいこうごう)」など、さまざまな不正咬合があります。また、骨格の左右非対称による不正咬合を「顎変形症(がくへんけいしょう)」と言いますが、こういった場合は外科手術によって顎の骨格の形や大きさ、位置を治すこともあります。

顎変形症では、歯の位置を整えるだけでは、歯並びはきれいになりません。骨切り手術により顎の骨格の形や位置、大きさを調整しなければならず、通常の矯正治療以上に大変な治療になります。

大人になってからでは手術しか方法がありませんが、お子さんは違います。子供の頃から矯正治療を受けていれば、成長に合わせて顎の骨格の成長方向を誘導できるので、顎変形症になる可能性を低く抑えることができます。

不正咬合の問題点

いずれの不正咬合も見た目の問題にとどまりません。日常生活にも何らかの支障をきたしていることが多く、虫歯・歯周病、歯の摩耗などさまざまな問題を抱えていることもよく認められます。
これは、不正咬合のままでいると、歯磨きがしにくかったり、お口が閉じにくくなり唾液が乾きやすかったりするためです。

しかも、いくつかの不正咬合が同時に認められることも珍しくなく、歯やお口のトラブルの増加に加え、不正咬合の治療を難しくしています。不正咬合イコール見た目の問題と油断せず、歯並びが気になったり、他の人から指摘されたりしたら、早めに歯科医師に診てもらうことをおすすめいたします。
不正咬合に関するご相談やご質問、矯正治療についてのお問い合わせは、当クリニックまでお気軽にどうぞお願いします。

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