最終更新日2024.8.23(公開日:2023.05.01)
監修者:日本矯正歯科学会認定医 院長 宮島 桜
矯正歯科認定医とは、日本矯正歯科学会がその治療に関する専門知識、専門技術、治療経験を有していると認定した歯科医師に与えられる認定医資格です。
今回は、認定医について、そして、それに基づいた歯科医院選びについて解説させていただきます。
矯正歯科認定医とは?
矯正歯科認定医制度を設けている日本矯正歯科学会についてご紹介します。歯科関連の学会はとても多く、国内にさまざまな学会が設立されています。
関係する学会や団体もいくつかあり、日本矯正歯科学会の他に日本成人矯正歯科学会、日本臨床矯正歯科医会、日本歯科矯正協会、日本先進矯正歯科学会などがあります。
このうち日本歯科矯正歯科学会は、その進歩と発展を目的とした学会として、1926年設立されました。
100年近い歴史を持つことからお分かりいただけると思いますが、関係する学会や団体の中で最も長い歴史があります。
会員数も多く、日本国内の歯科医師を中心として、現在、7,000名ほどの会員で構成されています。歴史、規模ともに大きな学界です。
認定制度を設けている学会や団体は、日本矯正歯科学会だけではありません。複数の学会や団体が認定医制度を設けています。
それぞれの学会や団体には、それぞれ特色があり、決して優劣があるわけではないのですが、”矯正歯科”という1分野に複数の認定制度があると、国民の方々が混乱する原因になります。
そこで、歯科関連の認定制度を統括している日本歯科専門医機構による協議が行われました。その結果、日本歯科専門医機構が認定する専門医資格は矯正歯科についてはひとつの学会・団体に限定することに決まりました。
そして選ばれたのが、日本矯正歯科学会です。日本歯科専門医機構から認定を受け、同学会の認定医は、現在、日本国内で唯一の専門資格として認められています。
認定医とは?
学会による認定医制度は、医療の水準維持・向上、適切な医療の提供を目的として1990年につくられました。
30年以上の歴史がある認定制度ですね。学会の認定は誰でも得られるわけではありません。
一定の条件をクリアしなければなりません。学会の認定医の資格を得るためには、
・歯科医師免許を有する
・歯科医師免許取得後、学会に5年以上継続して会員である
・学会が認める研修機関で基礎研修を受けていること、かつ5年以上の臨床経験を持っている
・学会誌での論文発表
・学会の定める試験に合格する
など定められた条件をクリアして合格する必要があります。
条件を見てみましょう。
歯科医師免許を有するのは当然ですね。
日本矯正歯科学会の会員歴5年以上の条件については、ほとんどの学会が同様な条件を課しています。
どうして5年なのかよくわかりませんが・・・。
研修機関での基礎研修と5年以上の臨床経験については、少なくともそれくらい経験年数がないと、症例の治療経験が積めないので、こちらも当然でしょう。
学会誌での論文発表はどこの学会でも課していますから、日本矯正歯科学会だけが特別というわけでもありません。
難しいのは、最後の学会の定める試験です。この試験、かなりハードルが高いです。審査症例を提出しなければならないのですが、これを使って審査が行われます。
誰が出した症例かわからないようになっているので、忖度はもちろんありません。こうしたことから、歯科大学や歯学部の教授クラスでもなかなか難しい試験になっています。しかも、認定医に認められたからといって、それで終わりではありません。
合格した後、5年おきに認定医を継続して認めていいかどうかの資格検査が行われます。ここで認定を取り消されることもあります。このような仕組みで、認定医の質を確保しています。
ところで、認定医はどれくらいいると思いますか?日本には現在、全国で歯科医師がおよそ10万人ほどいます。学会の発表によれば、学会認定医は2,500人強です。
そうです。
3%にも満たないほど数なのです。このことからも誰でもとれるような簡単な資格でないことがお分かりいただけると思います。
認定医以外の資格もある
実は日本矯正歯科学会では、認定医以外にも認定制度を設けています。それは、指導医と臨床指導医です。
余談ですが、臨床指導医は、元々は専門医と呼ばれていたのですが、改称されて臨床指導医という名称になりました。
認定医と、指導医、臨床指導医との違いは、ハードルの高さです。どれくらいハードルが高いのかというと、認定医と指導医、臨床指導医の数を比べると分かります。認定医は、前述したように2,500人強です。
それでも十分少ないのですが、指導医は500人強、臨床指導医になるとなんと350人強です。認定医と比べて一桁少ないわけです。臨床指導医に至ると、都道府県に10人もいない計算になることから、指導医や臨床指導医になるためのハードルの高さがお分かりいただけるのではないでしょうか。
どれくらいハードルが高いのか、指導医や臨床指導医になるための条件をご紹介します。
指導医は12年以上です。
早くても40歳前にならないと指導医にはなれないことになります。
そして、認定医と異なり、3年以上の臨床に関係する教育歴や研究実績も必要となります。
更新については、5年おきの更新が課されています。
指導医になるのはなかなか難しいことがわかりますね。
認定医の探し方
先ほどお話しした通り、認定医、指導医、臨床指導医はとても少ないです。当然ですが、なかなか出会えません。 どこに認定医がいるのかを調べるにはどうすればいいのかというのも、当然な疑問です。
実は、日本矯正歯科学会では、自身のホームページで認定医、指導医、臨床指導医の紹介をしています。
”認定医・指導医・臨床指導医を探す”のところから、”キーワードから探す”に入力します。
ご自身の住所を入れてみると、近くの認定医を紹介してもらえます。都道県別でも検索できるようになっていますので、そちらから探すのもひとつの方法ですね。
また、通いたい歯科医院のホームページで歯科医師の保有資格を調べてみるのもおすすめです。
それでもわかりにくい場合は、受診しようと思っている歯科医院に連絡して、直接聞いてみるといいでしょう。
専門医・認定医について
認定医についてここまで話してきましたが、一体、認定医はなんなのでしょうか?
専門医という名前もありますが、実は認定医や専門医でなければ専門的な歯科治療をしていけないというわけではありません。
認定医でなくても治療にあたることができますし、専門医でなくても口腔外科の治療をすることができます。
では、専門医や認定医にはいったいなんの意味があるのかと思う方もいらっしゃることでしょう。
専門医・認定医は、それぞれの専門分野で、専門的な研修教育を受け、専門的な知識や技術、治療経験を有すると認められた医師、歯科医師のことです。「あなたには専門知識や技術、経験があると客観的に認めましたよ」という認定制度なわけです。
ですから、認定医や専門医の資格がなくても治療にあたることができるわけです。
ところで、歯科領域では、さまざまな専門医、認定医制度が設けられていますが、厚生労働省が認定し、看板に標榜してもいいと認めている歯科での専門医資格は、それほど多くありません。
実は『口腔外科専門医』『歯周病専門医』『歯科麻酔専門医』『小児歯科専門医』『歯科放射線専門医』の5つだけです。
ここには、矯正歯科認定医は含まれていませんが、関係する専門医資格がないことから、専門医に含めるかどうかが検討されています。
認定医資格を医院選びのひとつの目安に
今回は、認定医について解説しました。もちろん、認定医資格を持たない歯科医師が全て信頼できないわけではありません。
認定医資格がなくても、治療をきちんとこなせる歯科医師もいます。ですが、認定資格がない歯科医師にスキルが備わっているかどうか、客観的に知る術はありません。
そういう点で見てみると、認定医は、一定の基準をクリアして、専門知識、専門的技術、治療経験があることを認められているわけです。
医院選びという視点でみても、認定医を持っているかどうかは一つの判断材料になると思われます。
一般的な歯科医院と矯正歯科専門医院
最後に、一般的な歯科医院で治療を受けるのと、専門の医院で治療を受けるのを比べるとどちらが良いのかについて、私見を述べさせていただきます。
虫歯治療など一般的な診療をメインで行っている医院でも、治療を行なっているところはあります。
院長が一般的な診療の合間に治療をしていることもあれば、外部から歯科医を招いて、月数回のペースで治療をしていることもあるでしょう。
専門でない歯科医師が治療をする場合、簡単な歯列不正なら治療も難しくないと思いますが、複雑な歯列不正ではそうは行かないことも考えられます。
また、他院で勤務している歯科医が来ている場合では、その歯科医師がいないときに、例えば装置が外れてしまうなどのトラブルで来院しても、すぐに対応できないかもしれません。
専門の歯科医院では、専門医が常にいるので、なんらかのトラブルがあっても、早い段階で対応が受けられます。 一般の歯科医院での治療を否定しているわけでは決してありませんので、誤解しないで欲しいのですが、専門かどうかは、歯科医院を選ぶ上で、一つの目安になると思います。
治療を考えていて、どこの歯科医院で受けようかと医院選びに迷ったら、専門の歯科医院に相談するのも良いでしょう。