最終更新日2024.8.23(公開日:2023.10.01)
監修者:日本矯正歯科学会認定医 院長 宮島 桜
その関係について
歯ぎしりは、歯や歯周組織にダメージを与えます。
具体的には、歯をすり減らしてしまったり、歯が割れたり、欠けてしまうなど、歯やお口のさまざまなトラブルの原因になります。
今回は、歯ぎしりの原因や種類、対処法などについて解説します。
歯ぎしりについて
あまり意識することはありませんが、上下の歯は食事中に噛んでいるとき以外は触れ合っていないのが正常な状態です。これを安静時空隙といいます。歯ぎしりは、食事以外の上下の歯を起きているとき、または寝ているときに、無意識に上下の歯を当てたり、擦り合わせたりする状態です。
英語ではブラキシズムとよんでいます。歯ぎしりは無意識にしていることが多いので、癖と捉えられています。
正常な状態である安静時空隙を損なうことから、歯ぎしりは体にとってよくない癖のひとつに数えられています。
歯ぎしりの原因
ストレス
噛み合わせ
歯並びや噛み合わせの悪さ(歯の高さのバランスが合っていないなど)も歯ぎしりの原因のひとつです。
歯並びが綺麗な人でも歯ぎしりをすることもありますが、歯並びが悪い人ほど噛み合わせが悪い傾向にあります。
噛み合わせが悪いと、上下の歯が正しく接することができません。すると、上下の歯を噛み合わせるために顎の筋肉を過剰に使わざるを得ず、筋肉が緊張し、歯ぎしりが起こりやすくなります。
生活習慣
歯ぎしりの種類
それぞれ、どのような違いがあるのか解説します。
ギリギリ型歯ぎしり(グラインディング)
一般的にイメージされる歯ぎしりがこのグラインディングです。上下の歯を擦り合わせる歯ぎしりです。
このため、ギリギリ、もしくはキリキリといった音が鳴るのが特徴です。
上下の歯を擦り合わせているので、歯が欠けてしまうこともあります。グラインディングは、一般的に寝ている間にしていることが多いです。
食いしばり型歯ぎしり(クレンチング)
クレンチングは、上下の歯に力を入れて強く噛みしめた歯ぎしりです。グラインディングと異なり、クレンチングは上下の歯を強く噛みしめているだけで、音を出しません。
「強く噛み締めた」と書きましたが、中には下の歯で上の歯を触る程度のあまり強くない噛み締めをしている方もいらっしゃいます。
クレンチングは、音が出ないので、自覚症状がないことも多く、気づかない方も珍しくありません。
カチカチ型歯ぎしり(タッピング)
軽く触れ合わせるくらいのタッピングなら、カチカチという音が聞こえないこともあります。
頻度は、グラインディング、クレンチングよりは少ないです。
歯や歯並びへの影響
歯周病の悪化
歯周病は、歯周病菌というお口の中の細菌が原因で起こる病気です。歯周病菌自体は、誰の口の中にもいるものなのですが、歯周病になりやすい人もいれば、なりにくい人もいます。その違いは、歯周病を進行させたり悪化させたりする要因の有無にあります。
歯ぎしりは、歯周病を進行させたり悪化させたりする因子のひとつです。歯ぎしりをしていると、歯を支えている骨などの歯周組織に負荷が加わり続け、これが歯周組織にダメージを与えます。
歯周病でダメージを受けたところに治りも悪くなり、歯周病が悪化するというわけです。
被せ物や詰め物の脱落
被せ物や詰め物は、接着剤でつけているのですが、歯ぎしりをしていると歯が横に揺さぶられ、接着剤が少しずつ壊れていきます。
歯にくっついていられないほど、接着剤が壊れてしまうと、被せ物や詰め物が取れてしまいます。
被せ物や詰め物の破損
歯ぎしりの程度と被せ物と詰め物の材質によっては、被せ物や詰め物が欠けるなど、壊れてしまうこともあります。
歯のすり減り
表面を覆っているエナメル質がなくなるまですり減ると、象牙質が露出します。象牙質はエナメル質ほど硬くないので、すり減りの進行が速くなります。
歯の破損
欠けるのは、薄い前歯の先端部分に多いですが、奥歯が欠けることもあります。
歯のクサビ状欠損
歯ぎしりすることで、歯が左右に揺さぶられ、歯冠と歯根の境界あたりに歪みが生じて生じると考えられています。
顎関節症
歯ぎしりの影響は、顎関節にも及びます。最初に申し上げた通り、上下の歯の噛み合わせ関係は、接触していない状態、すなわち安静時空隙があるのが正常な状態です。安静時空隙がある状態では、顎関節内部の上顎骨と下顎骨の間には適度な空間があります。
ところが、歯ぎしりをすると、下顎が上顎に向かって持ち上げられます。
すると、顎関節内部でも下顎骨が上顎骨を突き上げるため、本来あるべき上顎骨と下顎骨の間の空間が少なくなってしまいます。
狭くなったところは、顎関節にとって負荷がかかっているのと同じ状態なので、顎関節が炎症を起こし、顎関節症を引き起こしてしまいます。
歯列不正
歯の向きが外向きに傾くと、歯並びも外に広がります。歯と歯の間が広がり、隙間の多い空隙歯列になるリスクが生じます。
骨隆起
骨隆起は、骨の出っ張りです。上顎、下顎どちらにも生じます。下顎にできた骨隆起を下顎隆起、上顎にできた骨隆起を口蓋隆起といいます。歯ぎしりを続けていると、顎の骨が揺さぶられて歪みが出ます。
歪みが集中しているところが脆くなりやすいのは、顎の骨に限ったことではありません。
骨隆起は、歪みが集中して脆くなりそうなところに骨が増殖することで、骨が脆くなるのを防ぐために生じていると考えられています。
歯ぎしりの治療法
口腔内装置
口腔内装置とは、一般的にはマウスピースとして知られている治療用の器具です。マウスピースは、上顎、もしくは下顎のどちらかに装着します。上下両方ともにつけることはありません。
マウスピースには歯ぎしりを減らす効果があることが知られていますが、長期にわたってマウスピースを使っていると、知らないうちに落ち着いていた歯ぎしりが再発することもあります。
また、マウスピースには、歯ぎしりを減らすだけでなく、歯や被せ物、詰め物を歯ぎしりによる噛み合わせの強い力から守る効果もあります。マウスピースを使っていると、少しずつマウスピースがすり減っていきます。
マウスピースに穴が空いたり、または極端に薄くなったりしたら、マウスピースは作り直さなくてはなりません。
筋弛緩薬
咀嚼筋というお口を開け閉めする筋肉が緊張しすぎて、歯ぎしりをしているような場合に使われます。
筋肉の働きを弱くすることで、筋肉の緊張状態を緩和し、歯ぎしりを解消させます。
歯ぎしりの予防法
ストレスの軽減
歯ぎしりの原因のひとつはストレスです。ストレスを全くなくしてしまうことができればそれが理想なのですが、現代社会を生きていく上で、ストレスが生まれるのは避けられません。
しかも、ストレスをなくそうとすること自体がストレスになるという、一種のパラドックスになっています。そこで、ストレスをなくすのではなく、ストレスを軽減するように努めてください。
ストレスを軽減する方法は、趣味でもいいですし、ストレッチをして身体を適度に動かすこともいいでしょう。
睡眠をきちんととったり、生活習慣を規則正しくするのもストレス軽減に効果的です。
噛み合わせの改善
そこで、矯正治療で歯並びを整えることで、噛み合わせを良くしましょう。
噛み合わせを良くすることで、筋肉に生じる緊張を防げれば、歯ぎしりを起こしにくくなります。
マウスピース
マウスピースを入れていると、上下の歯を触れ合わせようにもマウスピースが介在しているのでできません。
ですので、歯ぎしりを防ぐことができます。
まとめ
今回は、歯ぎしりについて解説しました。歯ぎしりは、上下の歯を擦り合わせる癖ですが、ギリギリ型歯ぎしり(グラインディング)、食いしばり型歯ぎしり(クレンチング)、カチカチ型歯ぎしり(タッピング)の3つに分けられます。
いずれの歯ぎしりも、歯周病を悪化させる、被せ物や詰め物を壊したり欠けたりさせる、歯を欠けたりすり減ったりさせるなど、歯やお口の健康にとても悪影響を及ぼします。
歯ぎしりには治療法も予防法もあります。歯ぎしりでお悩みの方、歯ぎしりを起こしているかどうか不安な方などは、1人で悩んでいないで歯科医院で一度相談されることをおすすめします。
歯ぎしりに関するご相談やご質問などは、当クリニックまでお気軽にどうぞお願いします。